スケジュール管理はパソコンで行い、毎朝、役員にプリントアウトをして渡します。役員あっての秘書ですので、わたしも同じスケジュール表を使います。ただ、わたしの場合、どんなときも1冊のノートを必ず携帯し、忘れてはならないことをすべて書き留めます。
1つはその日の仕事の振り返りです。今日来社されたお客様はどんな方だったか、車で来られた方にはきちんと駐車場のご案内ができたか、徒歩の方には道順をしっかりお教えできたか……。備忘録として書き残すのは、すべてのお客様に同じように対応するためです。失敗の反省も書きます。塙(義一・元社長および会長)の秘書時代は会社が経営的に大変な時期でした。「秘書が暗い顔をしていてはいけない」「もっと笑顔でいなければいけない」と戒めを書きつけました。失敗をしても、ノートに書くことで吹っ切り、引きずらないようにして次の日を迎えるようにしました。それは今も変わりません。
朝は役員より1時間前、7時ごろ出社し、まず鏡の前に立ち、身なりとその日の健康状態をチェックします。今日も笑顔でいられるよう心の準備です。次いで役員室に行き、本人が座る椅子に座り、仕事をしやすい状態になっているか、役員の目線で確かめます。こんなことをするのはわたしだけのようで、人に話すとよく笑われますけれど……。そして、役員を出迎え、お茶を入れ、スケジュールの確認をして1日が始まるのです。
今はデジタルの時代ですが、心がけてアナログも使うようにします。例えば、書類を届けるときも一筆箋に2言、3言、手書きして言葉を添える。お客様宛にもちょっとした季節の話題や「今度ぜひお立ち寄りください」といったご挨拶を手書きすれば、よい心証を持っていただけます。メールも件名に要件を入れ、簡潔に結論から書き出したあとに、「余談ですが」とひと言添えれば、先方も手短に要件をつかめるうえ、印象も変わります。
それは役員の仕事にもプラスに働くはずです。単に時間を管理するだけでなく、ボスの時間を活かすのが秘書の基本だと思っています。
(写真※注:市販のノートを常に携帯し、訪問客への対応が十分だったか等々、その都度気付いた点をボールペン、蛍光ペンで書き込む。半年に1冊のペースで消費する。「昔は若さにまかせてただただ走るだけでしたが、塙さんに付いた頃からいろんな場面で『これではいけない』と思い知り、ノートにも反省の言葉が入るようになりました」(佐藤氏)。)
東京都出身。日産自動車入社後、2カ月で久米豊社長(当時)の秘書アシスタントに。以来、塙義一副社長(当時)はじめ取締役、副社長、常務など6人の役員の秘書を務める。『エグゼクティブ秘書の「気配り」メモ』(すばる舎)上梓。