思考、判断、行動いずれもスピード第一――。企業トップの強力な駆動を社内外に伝達するには、“時間差ゼロ”でその頭と手足になり切れるストイックな黒子役がぜひとも必要だ。

違和感の「んっ?」を見逃さない

セブン-イレブン・ジャパン 
藤本圭子氏

セブン&アイ・グループを率いる鈴木(敏文会長兼CEO)の秘書を務めて23年になりますが、常々、感じるのは鈴木の時間に対する厳しさです。

会議についてもそうです。会議は何かを決めるのが目的であるという前提で行いますので、事前のツメが甘いと、担当者が発表を始めて5分しか経っていなくても、中止させます。参加者はみんな貴重な時間を割いている。本質から外れた無意味な会議は時間の無駄で、すべきではないと考えるからです。

定例の会議は月、火曜日に集中し、その場で鈴木からいろいろな指示が出ます。鈴木はアンサーをものすごく早く求めますので、1週間置いたりすることは許されません。担当役員は週の後半に答えを持ってやってきます。難しいのはスケジュール管理です。社外からのアポイントで日程が埋まると、社内のアポイントが入らなくなってしまいます。そこで必要なのが「仮説」を立てることです。

まず、月、火の会議でどんな指示が出たか、わたし自身、マネジャー級以上の会議には出席して把握します。役員級の会議については鈴木に様子を聞いておきます。すると、どの役員がどんな答えを持ってやってくるか、予知できます。

そして、それぞれの役員のその週のスケジュールを調べ、それぞれの心理的な“癖”も読んで、週後半のこの辺にアポイントが入りそうだと仮説を立てます。役員にも、朝イチで報告して早くすませたがるものもいれば、午後のゆったりした時間に説明しようとするものもいますから、心理も重要な要素です。仮説どおりにアポイントが入ったか、結果を検証し、次の仮説に活かします。

鈴木の経営は、店舗での品揃えでも、商品開発でも、明日の顧客のニーズについて仮説を立て、実行し、結果を検証する「仮説・検証」が基本です。同じことは秘書の仕事にも求められるのです。予知能力と仮説を立てる力がなければ、打てば響くような仕事はできません。