思考、判断、行動いずれもスピード第一――。企業トップの強力な駆動を社内外に伝達するには、“時間差ゼロ”でその頭と手足になり切れるストイックな黒子役がぜひとも必要だ。

気働きの基本は「……かもしれない」

壱番屋 
中村由美氏

10年ほど前から、上司のスケジュールをパソコン上で管理しています。アクセスする権利を持っていれば、当社では誰もが浜島(俊哉社長)のスケジュールを見ることができます。社内の人間はこれを見ることで、社長の入る会議や打ち合わせの時間を決めるのです。

エクセルでつくったスケジュール表の中身は色で類別しています。現役社長のスケジュールの約半分は定例の会議や行事が占めますが、定例ではない取締役会、IR関連の会議なども含めて青や緑といった寒色系で書き込みます。赤、オレンジなど暖色系はゴルフや人間ドック、新聞・雑誌のインタビューなど個人的色彩の強いもの。赤と青の混ざった紫は、店舗巡回や視察など流動的な外出業務です。

色の濃淡も使い分けます。例えば海外出張などでチケット、ホテルなどが確定している場合は濃い色に、手配をしていない場合は薄い色にしておきます。社長が出張する際のチケットなどはわたしが取ることが多いのですが、同行する社員が手配するケースもあります。その場合は薄い色にしておいて、同行者から「予約しました」という連絡が入り次第、色を濃くします。太字にするのは注意の喚起。「これは重要な会議ですから忘れないでください」などと念を押すのです。

浜島は、縮小コピーしたこの表を畳んで手元の手帳にはさんで外出します。日中はほとんど社内にいませんから、わたしが直接打ち合わせをするのは朝11時から10分程度。後は電話とメールのやり取りだけで済んでいます。

ここまで公開しているところも少ないと思いますが、この表を共有することで、逆に各部署が表に間違いがないかどうか確認してくるようになりました。注意喚起を促せたんですね。どんな事柄も「……かもしれない」と、暫定事項と捉えておくことが気働きの基本だと思うんです。