季節ごとの贈り物や接待などの習慣はアメリカやドイツにもあります。いずれも比較的フラットな社会ですから、階級社会のイギリスやインド、中国人などと比べればつきあいはしやすいほうだといえます。
ただしドイツ人は幼い頃からの教育もあって、会議などの際に理詰めで攻めてくることが多く、相手の逃げ場を奪うような話し方をしてくる傾向があります。そういう意味で、理詰め攻勢に慣れていない日本人にとって、ドイツ人の上司がいちばん厳しい存在といえるかもしれません。ただし、ドイツでは比較的雇用が守られており、簡単に解雇はできない労働環境にあります。そういう意味では、逆に比較的フランクに話しやすいアメリカ人上司のほうが、ある日突然リストラを行ったり、高いパフォーマンスを求めてきたりするのでシビアだという言い方もできるでしょう。
最低限の言語として英語は必要ですが、わが社のような工作機械メーカーなら、この業界で働く人独特の性格やタイプというのがあり、国籍や言語を超えて、わかりあえると感じることはよくあります。ですから、もしそのような状況に置かれたら、来るものは拒まずの精神で果敢に臨んでみてはいかがでしょう。
外国人を上司に持つというせっかくの機会なのですから、その国の人を思いっきり好きになってやろうというくらいの気持ちで腹を据えてみてください。
もちろん、それぞれ国民性はありますが、それにピッタリ該当する人ばかりではありませんので、ステレオタイプで一方的に判断するのは危険でしょう。まず、あなた自身が日本人として自分の芯をしっかり持ち、必要なら勇気を持ってノーといえる覚悟がときには必要だということも忘れないでください。
森 雅彦
1961年、奈良県生まれ。京都大学工学部卒業後、伊藤忠商事を経て、37歳で森精機社長就任。