嶋さんはこう振り返る。
「学生時代は家にも帰らず、研究に没頭する日々でした。クルマが好きで、自動車業界で仕事をしたいと思っていましたが、リーマンショック後は求人が少なく厳しい状況でした。研究室でレースカーを作成したり、大会に出場したりした経験が、就活を続ける自信になったと思います。このプロジェクトに出合っていなかったら、いまの会社に入れていたかどうか。面接でも、先進的な研究に取り組んだ姿勢が評価されたのだと思います」
小原教授は「意欲のある学生は企業に評価してもらえる」と話す。
「グループで課題に取り組み、物を作る体験学習では、研究開発の現場に求められるチームワークやリーダーシップをいち早く身につけられます。実際、OBに対する職場の評価も良いようです」
玉川大学工学部の偏差値は42~46と低いが、研究レベルは高く、学生たちは大きく成長する。同学部の11年3月卒の就職率は97%。とりわけ女子は100%である。就職者の31%が製造業、20%が情報通信業に進んでおり、グローバルに活躍できる「ものづくり」の世界に強い。大学の教育・研究や就職支援の熱心さは、必ずしも偏差値に比例するわけではないのだ。
工学部の偏差値は44(2012年度)。3つの学科がある。
写真※注:右からトヨタテクノクラフトに勤務する嶋幸彦さん。機械情報システム学科の小原宏之教授。助手の井組裕貴さん。修士2年の弦弓誠さん。小原教授が総監督を 務める「玉川ソーラーチャレンジプロジェクト」ではワールドソーラーカーラリーでのグランドチャンピオンなど華々しい実績を誇る。