蘭さんは「青山学院以外の私立は考えられない」とでも言わんばかりのかたくなさで、奥野の助言を聞き入れなかった。蘭さんの家庭の雰囲気や教育方針に似合いそうな学校と言えば、聖心女子学院の初等科や、東洋英和女学院の小学部あたり。奥野には、青山学院よりルナちゃんに合う小学校がはっきり見えていた。
小学校受験の合否判定は、ペーパーテストだけではないため、受験者には合否の本当の理由が最後までわからない。あくまで奥野の憶測だが「ルナちゃんは雰囲気にのまれ、パニックになったのではないか」という。結局、青山学院と筑波大附属、ともに不合格になってしまった。
「ひとつも合格できず、子どもの心に傷が残れば、母親が中学受験でいくらリベンジさせようとしても、子供本人の心が委縮してしまっていて、残念ながらどうにもならない場合が多いんです」
ルナちゃんは早くから成績優秀だったが、小学校受験の場合、人気校を目指していたとしても、早い段階から好成績を取っておく必要はないという。
「年長さんの夏休み後、成績が急上昇することがあります。これを『黄金曲線』と呼んでいますが、それにうまく乗せてやることが大事。自分の子供にはどんな勉強法が合うのかを、親が見極めてやる必要があるのです」
それまでに頑張りすぎると、夏休み明けに急速に息切れしてしまう危険性があるらしい。
東京・恵比寿にある幼稚園・小学校受験向け完全個別指導塾「エルク」塾長。指導歴38年。子供の受験指導だけではなく、確実に合格できるよう一人ひとりにあった学校選びから、願書指導・面接指導など指導内容は多岐にわたる。