リンダ先生から新入社員、若手社員へのメッセージ

日本には新卒一括採用という雇用慣行があり、そのことが若年失業率を大幅に引き下げているのは確かだと思います。だからこそ、日本の若者は他国の若者と比べてキャリア意識が低く、就職より就社の意識が強いのも、また確かでしょう。

欧米でも、15年ほど前までは、企業と労働者の関係は親子のようなものでした。でも、この関係が、両者が互いに独立した、大人と大人の関係に一変しました。日本も次第に移行していくでしょう。そのときに大切になるのが本書で述べた「3つのシフト」です。

第1のシフトの内容を一言でいうと、深く、そして絶えず学び続けよ、ということです。企業の枠を超えた普遍的なスキルや知識を学び、実践する必要があります。

第2のシフトでは、3つのタイプの人的ネットワークを築く。1つは志を共有した仲間であり、2つ目は様々なアイデアや示唆を与えてくれる主にバーチャルの世界のネットワーク、3つ目はあなたの精神的な支柱となってくれる顔見知りの関係です。日本においては、2つ目のネットワークが特に大切になると思います。その際には英語が必須になるのは言うまでもありません。

第3のシフトのメッセージは、働くことを楽しもう。現在、いくつかの企業と組み、どうしたら仕事がおもしろくなるか、という研究を行っています。

仕事が楽しくなる要因は2つあります。自分の裁量が広範に利くことと、自分の成果に対して同僚からフィードバックが存在することです。実際、そのメカニズムを職場に取り入れて、社員の働く意欲を高めている企業もあります。

シフトの大前提となる「 変化」にも注意を払う必要があります。テクノロジーの進化、グローバル化、長寿化、社会そのものの変化、エネルギー問題の深刻化の5つです。小さな子供たちには、より大きな影響が出るでしょう。あなたに子供がいるなら、日本で、そして世界で今何が起こっているか、何が変わりつつあるかをしっかり伝え、教育されることをお勧めします。

ロンドン・ビジネススクール教授
リンダ・グラットン

経営組織論の世界的権威。英タイムズ紙の選ぶ「世界のトップビジネス思想家15人」のひとり。2012 年に発売された『ワーク・シフト』は日本で10万部のベストセラーに。

キャリア形成コンサルタント
伊賀泰代

一橋大学法学部卒業後、日興証券を経て、1993年から2010年までマッキンゼーで主に採用マネジャーとして活躍し、独立。著書『採用基準』は10万部超の大ヒット。
(荻野進介=構成 市来朋久=撮影)
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