もはや職業倫理だけでは銀行での不正を防げない

さらに経済格差にもつながる男女格差。銀行でも、女性社員の給料は男性に比べて低く、それでも40代の正職員ともなれば年功序列で人件費がかかることを厭われ、「本社の総務部に異動」という「肩たたき」に遭うことが描かれている。

梨花は、家庭でも上場企業の社員である夫に「たいした稼ぎもないのに」という目で見られ、夫が上海に転勤することになったときも、当然、銀行を辞めてついてくると思われている。それに反発して梨花が「仕事は辞められない。私だってそれぐらいの仕事をしているんだから!」と怒る場面が印象的だ。

もちろん、どんな不遇な環境にあったとしても、どんなに差別されていたとしても、他人のお金を盗んでいいことにはならない。今回の貸金庫窃盗事件でも、犯人を擁護できる情状酌量の余地はゼロだろう。

横領に始まり横領に終わる2024年

思い返せば、2024年の春には、メジャーリーグで活躍する野球の大谷翔平選手が、通訳の水原一平に約26億円を使い込まれていたことも発覚した。横領に始まり、横領に終わる、散々な1年だが、やはり大金を持つ人の身近にいて、その金を動かせる立場にあるとき、人はタブーを犯したい衝動にかられてしまうのかもしれない。

銀行での不正行為をなくすためには、「良い悪い」の職業倫理だけではなく、そういう人間心理をもっと深く広く理解し、格差というリスク因子にも注意するべきではないだろうか。

関連記事
「強盗に狙われやすい家」には共通点がある…元警視庁捜査官が勧める「家を守る防犯対策」9選
「出品者の泣き寝入り」を無視し続けたツケである…「#メルカリ詐欺」の炎上に油を注いだ"メルカリの大悪手"
忘年会で泥酔した夫が同僚に抱きつき…突然「性犯罪者の妻」となり、仕事・金・家を失った40代女性の苦しみ
日本人は「豊かな3割」と「生活が厳しい7割」に二分される…欧米とは異なる「不気味な日本の格差社会」
東京は「金持ちと貧乏人の街」になりつつある…日本で格差がどんどん広がっている根本原因