「大学教員が解説してよいものだろうか……」

私が受けた依頼は「『わがままボディ』という言葉の意味を解説してほしい」というものでした。「わがままボディ」という言葉には、グラビアアイドルの写真に載せるキャッチコピーで使われるイメージがあります。

「大学教員が解説してよいものだろうか……」

心に迷いが生じました。でも、迷いとは裏腹に、頭は瞬間的に働き出し、「わがままボディ」という言葉から連想する気づきを、スマホのメモ帳アプリに書き始めてしまったのです。

「『わがままボディ』には、ゆるいボディに近い響きがある」
「『わがまま』と『ボディ』は本来結びつきそうにない言葉が結びついたところに面白さがある」
「自分で『わがままボディ』という分には許される」
「いとうあさこさんが、よくいっていたような記憶がある」

メモを書き連ねているうちに、気がつけば、今さら断るという選択肢がなくなっていました。

「ここまで気づいてしまったからには、もうやるしかない」

収録では品位を保ちながら解説すればよいと考え、出演のオファーを受けることにしたのです。

「わがままボディ」の定義とは

番組の収録時は、「わがままボディ」という言葉がいつから使われ始めたのかなど、番組スタッフが調べた「わがままボディ史」のウンチクが明かされます。私も国語辞典の解説などを踏まえ、番組内で「わがままボディ」という言葉を学問的な視点から解説することができました。

終始楽しい雰囲気で収録が進められ、「もう終わりかな」と思っていたところ、番組から最後に追加のお願いを受けました。スケッチブックに「わがままボディ」の定義を書いてほしいというのです。そこで私は次のように定義しました。

齋藤孝『「気づき」の快感』(幻冬舎新書)

を気にせず、自分を思うままに表現する心身のあり方」

「心身」としたのは、体だけではなく、心のあり方も含まれるというところを伝えたかったからです。実は、私はこの定義を打ち合わせの段階から思いついていました。ディレクターの方々との会話の中で「これは体の問題だけじゃなくて、本人の心のあり方とか生き方の問題でもありますね」といった話をしていたのです。

いずれにせよ、番組出演のオファーを受けたことで、ここまで思考を深めることができました。オファーをいただくというのは課題を与えられるようなもので、本当にありがたいことなのです。

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