学生たちに「むちゃぶり」を仕かけるワケ

何から何まで準備した通りにこなしているのでは、柔軟な発想力が失われてしまいます。そこで私は、学生たちに抜き打ちで即興ライブを行ってもらう機会を作っています。

「今日は文学作品でコントを作って、みんなの前で演じてください」

そんなことをいきなりいわれるのですから、学生たちは当然のように困惑します。

でも、実際にやってみると、結構面白いコントを作るのです。

学生たちの対応力に感動した私は、さらなるむちゃぶりを仕かけます。

あるとき「三人称単数現在形のs(三単現のs)でコントを作ってください」という課題を出しました。我ながらすごいむちゃぶりです。

英語では、主語が三人称単数のとき、動詞の最後に「s」をつけるルールがあります。退屈な文法のルールであり、コントとはおよそ相容れない知識です。

ところが、学生たちはまたたく間に秀逸なコントを練り上げます。一つのグループは「宅配便の配達員とお届け先」という設定でコントを作りました。

人間は、もともと「気づき」の力を持っている

配達員は、まずplayさんのお宅に「s」を届けます。次にgoさんのお宅に行くのですが、goさんはsを受け取ってくれません。「esでなければ受け取れない」というのです。さらにstudyさんのお宅へ行くと、sもesも受け取りを拒否され、iesを要求される、という筋書きです。他の学生たちにも大ウケで、私も「よくぞこんなコントができたな。天才だ!」と感動しました。

劇場で拍手を送る笑顔の観客
写真=iStock.com/izusek
※写真はイメージです

人間は、もともと気づきの力を持っています。ただ、普段はそれを使わずに眠らせているだけです。

「この時間に何かを作る必要がある」
「せっかく作るなら、いいものを見せてみんなに評価されたい」

そう思うだけで、次々とクリエイティブなアイデアを生み出すことができます。たった数分のコントでも、大変な数のアイデアが詰め込まれるのです。

私も学生たちの頑張りに刺激を受け、むちゃぶりされたら全力で応えることをモットーにしています。