ヒットを生むコツはあるか。電通のマーケター、佐藤真木さんと阿佐見綾香さんは「ビジネスに主観を持ち出してはいけないという考え方が一般的だが、必ずしもそうではない。“ヒット作品”の根幹には、いつも個人的な感情があった」という――。

※本稿は、佐藤真木・阿佐見綾香『センスのよい考えには、「型」がある』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

「気づき」はどの瞬間に生まれるのか

「気づき」や「違和感」とはどういうことでしょうか? 最初に言葉の定義をしておきましょう。「気づき」や「違和感」なんて日常的にあるものだから、特に考える必要もないと思う方もいるかもしれませんが、ここをひもとくことで、「気づき」や「違和感」の重要性がわかっていただけると思います。

まず、「気づき」や「違和感」を持つときは、なんらかの「感情」が伴うことが多いと思います。

では、「感情」はどんなときに生まれるのでしょうか?

「感情」が生まれる一つの要因は「予測誤差が大きいとき」だそうです。

人間は絶えず外部からの情報を受け取りつつ、常に少しだけ先を予測しながら生きています。

「不快の感情」は危険を察知するセンサーである

例えば、階段を上るときなどを想像してください。

長い階段
写真=iStock.com/SVproduction
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あまり強く意識していないかもしれませんが、人間は次の一歩を予測せずにはうまく階段を上れません。自分自身の予測よりも誤差が大きいとき、例えば急に段差が大きくなるなど、つまずきそうになるような危険な状況であれば「不快の感情」、階段が滑りづらい素材でできていて予測よりも安全な状況であれば「快の感情」が発生します。

このように「感情」は合理的なセンサーであり、「予測誤差」が大きいときに「感情」を発生させることで、人間は予測と違った危機的状況に対してもよりスピーディーに対応できるのです。