山川が1位に思うこと

ソフトバンクの甲斐拓也は7回目の受賞。数字も堂々たるものだが、盗塁阻止率が0.284(リーグ5位)と3割を切ったのは気がかりだ。

一塁手は、山川がすべての指標で1位。規定試合数以上が彼だけだからだ。ゴールデン・グラブ賞は規定試合数以下でも「チーム試合数の2分の1以上で1ポジションの守備についている」選手も対象となる。だからロッテのソトや鈴木大地にも票が入った。

筆者作成

若いころの山川はライオンズの春季キャンプで居残りの守備練習をしていた。守備力は向上しているが、一塁守備の名手とは言い難い。ほかにいないから選出した、と言っては失礼だろうか。

名手・源田の「安全運転」

遊撃手は西武の源田が7年連続7回目の受賞。今や第一人者だが、守備率は1位とはいえRFは規定以上の最下位。前述のとおり、ベテランになると無理目の球は追わない「安全運転」になることが多い。その兆候が見え始めている。

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外野手はソフトバンクの周東、楽天の辰巳が中堅。万波が右翼。万波は今季、両リーグで唯一の2桁補殺。ずば抜けた強肩だ。辰巳は中堅でフル出場してRFが1位。刺殺数397は、NPB記録だ。万波とともに当代最高の外野手だといえる。

パ・リーグでも守備率1位の野手が9人選ばれている。

スポーツメディアではないプレジデントオンラインで、ここまで守備について詳しく紹介したのは「日本野球の守備」の価値基準が、いかに不確かで、いい加減なものかを知っていただきたかったからだ。

選出に当たっては、具体的な指標に基づくのではなく、イメージや、ひいき目で投票していた記者が多いのではないか。またベストナインの副賞であったり、ベストナインを漏れた有力選手の残念賞になったのではないか? そういう印象がぬぐえない。