精鋭部隊なのに機能不全…ロシア兵に広がる困惑

すでに北朝鮮軍の兵士らは、戦地で活動している。フランス24によると、ロシア西部のクルスク州とブリャンスク州のウクライナ国境から7キロメートルの地点に、数百人が配備されている。

英BBCによると、派遣された部隊の多くは、北朝鮮最精鋭の第11軍団(ストーム軍団)の出身だ。同部隊は、敵陣地への潜入、インフラ破壊、暗殺の訓練を受けているとされる。

ただし、戦闘に投入された北朝鮮軍には大きな課題もある。専門家らは、言語の壁やロシアのシステムに対する不慣れさが戦闘任務を複雑にする可能性を指摘している。その結果、北朝鮮軍は主に工学・建設能力を活用される可能性が高いとの見方もある。

北朝鮮兵がロシア極東の訓練場で装備品を受け取っているとされる動画(SPRAVDI — Stratcom Centre@StratcomCentreのポストより)

ロシア兵らは援軍を歓迎するどころか、煙たがる傾向にあるようだ。ウクライナの防衛情報局が入手した盗聴音声からは、ロシア軍内部での混乱が浮き彫りになった。米CNNが取り上げたこの音声では、ロシア兵が北朝鮮兵らを「K大隊」との暗号名で呼び、さらには「クソったれ中国人」と侮蔑的に呼んでいたという。

不満の理由は、ずさんな人員配置計画だ。実戦経験の乏しい北朝鮮兵士をいかに指揮し、弾薬や軍事装備を供給するかについて、明確なプランが存在しない。

現場のロシア兵らの間に、困惑が広がる。CNNによると、ある兵士は、「(北朝鮮兵らは)目を見開いて全身全霊で立っているだけだ。クソッ、やつが来ても、こいつらをどうすればいいのか」と苛立った様子を傍受された通信のなかで見せたという。

人員配置についても問題が生じている。傍受された通信によると、北朝鮮兵30人に対して通訳1人と上級将校3人を配置する計画だった。しかし、あるロシア兵は、「30人に上級将校3人というのが理解できない。どこから連れてくるんだ?」と、人員不足の現場と計画との隔たりに不満を隠さない。

水も食料も持たされず、“肉挽き機”の餌食に

北朝鮮は世界最大級の軍事力を持ち、現役兵力128万人を擁する。しかし、近年では実戦経験がないことが大きな弱点となっている。戦略国際問題研究所のマーク・キャンシアン氏はBBCの取材に対し、「北朝鮮軍は徹底的に教育されているが、即応性は低い」と指摘する。

経験不足の北朝鮮兵にあって、特段懸念されるのが、戦場での配置だ。国連制裁の専門家であり、北朝鮮に関する国連専門家パネルの元コーディネーターでもあるヒュー・グリフィス氏は、フランス24の取材に対し、ロシア軍が北朝鮮兵士たちを「ミートグラインダー(肉挽き機)」の餌食として戦場に送り込まれることになると述べている。満足な装備も持たせず、敵の兵器の囮として使われるとの見方だ。

さらにグリフィス氏は、彼らの生存や食料・水といった基本的なニーズに、ロシア軍はほとんど関心を示さないだろうと警告している。「彼らは良い待遇を受けず、消耗品として使われる」との見方を示した。

ただし、戦況が厳しさを増す中で、北朝鮮軍の存在感は否定できないものとなりつつある。退役した韓国陸軍中将のチョン・イン・ボム氏は、ウクライナでの戦争が3年目に入ろうかという現在、北朝鮮軍は「ロシアが動員可能な部隊の中で最も戦闘能力が高い」と分析している。