航空会社で、特にこの資質が重視されるのがパイロットだ。同社では、ある年のパイロット採用面接のときに、スーツを着た候補者を前にしてバミューダパンツを並べ、「そんな堅苦しい格好をしていないで、これに着替えたらどうだね」と勧めたという。怒って帰ってしまった候補者もいたが、喜んで着替え、ネクタイにバミューダパンツというおかしな格好で楽しみながら面接を受けた候補者は、全員採用された。
「パイロットの判断ミスは、ともすれば大事故につながります。ユーモアがある人は、何かあってもパニックに陥ることなく真正面から取り組むことができるうえ、チームワークの能力も高い。そのため、特にユーモアを重視したのでしょう」と大島氏。この航空会社は実際、事故が非常に少ないことでも知られている。
新しいアイデアを生み出す創造力にも、ユーモアは関係する。内藤氏は、「笑った後のほうが創造力が高まる」という研究結果を紹介する。
米国メリーランド州にあるバルチモア大学のアリス・アイセン博士が行った調査によると、
(1)コメディ映画を見て大笑いする、
(2)軽い運動をする、
(3)甘いキャンディを食べる、
(4)数学の講義の映像を見る、
(5)何もしない
という条件のうち、(1)の大笑いをした後が一番創造的になれることがわかった。何もしなかった場合に比べ、創造力テストの結果が3倍以上も上がったのだ(図2)。
「人間の物理的な視野は、悲観的になるほど狭くなることがわかっています。落ち込んでいる人ほど視野が狭くなるので、電柱にぶつかったり交通事故に遭ったりしやすくなるという悪循環に陥るのはそのせいです。反対に、楽観的だと視野は広くなります。笑って楽しい気分になれば視野が広がり、普段気付かないことにも気付くようになる。アイデアも湧き出すし、ビジネスチャンスも見つかりやすくなるのです」(内藤氏)