インタビューに答えた成績の高い営業担当者は、たとえばこんな営業トークを披露してくれたという。

「この商品は、寿司ネタで言うと極上のトロ。私はガリです。トロのおいしさを引き立て、良さをわかっていただくためには私が必要なんです」

同じ商品を買うなら、こんなに楽しく、比喩表現を使いながらわかりやすく説明する営業担当者から買いたいと思うのが、顧客の心理だろう。

(AFLO=写真)

「ユーモアとはすなわち、物事を楽観的にとらえる力です」と話すのは、心理学者の内藤誼人氏だ。内藤氏も、ユーモア度や楽観性の高さは、仕事の能力に直結すると説く。

「ウィスコンシン大学のジェームズ・ブロンソンの研究ですが、1997年に起こった洪水で被災した約900社を対象に調査を行ったところ、オーナーの楽観性が高いほど、企業の業績が被災前のレベルに回復するまでのスピードが速いという結果が出ています。また、心理学者のマーティン・セリグマンの研究によると、政治、スポーツ、アカデミックのどの分野でも、明るい人ほど成功することがわかっています。セリグマン先生は言います。『選挙の候補者が2人いたとすると、僕はどっちが当選するのか予測できる。つまり、明るいほうが当選する』と」

悲観して「もうダメだ」と思ってしまうと、問題に積極的に取り組むことができない。ユーモアは、困難に直面した際の、問題解決力にも関係するのである。

「ほとんどの問題は、積極的にぶつかれば解決できるものです。ところが、多くの人は怖くてぶつかれない。ユーモアがある人は楽観的なので、問題を問題ととらえません。だからうまく乗り越えていけるのです」(内藤氏)。

アメリカでは、ユーモアと課題解決力の関係に着目して人材の採用を行っている会社があると大島氏は言う。高い利益率や顧客満足度で知られるアメリカの格安航空大手、サウスウエスト航空では、「ユーモアセンスがある」ことを採用の条件にしている。「ユーモアがある人は、変化対応力があり、プレッシャーの中でも落ち着いて行動できる」(大島氏)というのがその理由だ。