会議でただの「記録係」になっていないか

手書きでノートを取るときには、単にキーワードを書き取るだけでなく、重要なところを丸で囲んだり下線を引いたりしてすぐに強調できますし、矢印を使って因果関係や流れを表すことも簡単です。そして、すでに書いたところに戻っていつでも書き足すことができます。

そうした自由自在な作業はキーボードだけではできません。ワープロソフトの機能や電子ペンを使えば可能ですが、複雑な設定に注意を向けると、大事な部分を聞き落としたりしてしまうかもしれません。

以上に述べてきたことを総合的に考えると、ノートやメモを取りながら内容を整理して咀嚼し、さらに的確に要約する必要があるときには、手書きのほうがキーボードよりも優れていると言えます。会議の場で忙しく機械的にキーボードを打っているだけでは、議論に積極的に参加したり、新たなアイディアを出したりするうえで不利になるばかりです。

本気で問題解決に貢献するためには、受け身でタイピングに徹するような「記録係」では不十分なのです。

メモの「欠落」を埋める作業が重要

一方で、いくら手書きでも逐語的に書き取るようでは、あまり効果が期待できません。手書きの本来の長所は、手作業が忙しくなりすぎないことであり、その分考える時間的余裕が得られることです。

真面目な人ほどできるだけ多くを書き取ろうと一生懸命になりがちですが、むしろ「少なく書く」ほうが重要だというわけです。要点を見極めて自分の言葉でまとめて書くときに理解が深まり、脳に定着することを知っておきたいものです。

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もちろん、手書きではすべてを記録できない以上、手書きのノートには情報があちこち抜け落ちていることでしょう。大事なことがどこか抜けているだけではありません。時には矛盾した内容が書かれていて、後で理解に苦しむこともあるでしょう。

それは自分の書き損じなのか、それとも元の説明のほうが間違っていたのか。そうした不安もあって、多くの人はキーボードで正確に書き取るほうが優れていると思いがちなのかもしれません。

しかし、実はそうした欠落を埋めようとすることが、学習にとても役立つのです。自分で書いたノートを読み返すときには、抜け落ちた情報を思い出そうとしたり、想像力を働かせて補おうとしたりするでしょう。

「このメモはたしかこういう話の一部だったはず……」などと、ノートに書かれた手がかりを頼りに脳の中で再構成してみるわけです。その確認作業は学習の効果が高いものですし、時には講義や記者会見の内容が鮮やかに蘇ることにもなります。