有権者からは「中道政党」だと見られていた

私が取材を重ねた維新の分析レポート(11月18日発売『「嫌われ者」の正体』所収)に一部重なるのだが、その取材結果から問いの答えが見えてくる。

石戸 諭『「嫌われ者」の正体』(新潮新書)

2年前の参院選で政治学者、秦正樹(政治心理学)に取材をした。彼の実証分析によれば、大阪に限らない全国規模の維新支持層や評価を分析するとそこに明確な特徴を大きく2つ観察することができる。1つ目は維新という政党がどう見られているかだ。秦らの研究グループは有権者への調査でこんな質問をした。

主要政党のイデオロギーについて、0を最も左派、10を最も右派、真ん中を5としたとき、主要政党と回答者自身をどこに位置付けるか。最も右派と評価されたのは自民、左派は共産と社民、立憲も左派寄りと見られていたが維新は中道に位置し、有権者の立ち位置ともっとも近かった。

実は有権者の意識と最も近い政党が維新と見なされていることがここからわかる。また有権者が野党に望んでいるのも、政権に対して原則対抗ではなく、是々非々の姿勢で臨むというものだった。

こうした調査について、維新に批判的な層はこう考えるはずだ。維新はともすれば安保政策で自民より右派的、維新など中道とも言えないのではないか。だが政治家の発言と、有権者の評価は往々にしてずれる。調査から分かるのは、維新の支持層は外交政策を重視していないということだ。外交政策を重視する人は自民に投票している。維新への期待は政治改革や財政再建に集まっており、外交や、維新が強調してきた教育改革もあまり顧みられていない。外交への期待度が低いのは立憲も同様である。

自民はより右に、野党はより左にポジションを移した

もう1つの特徴は、政権担当能力への評価だ。

国政選挙の前後で秦らが調査したところ、2021年衆院選の結果になるが、60%前後の有権者が自民に政権担当能力があると評価していた。これは与党としては当然である。維新への評価は選挙前の25.6%から選挙後は33%まで跳ね上がった。

これは立憲を大きく引き離し、野党で最も高い結果になった。大阪で与党として選挙での支持を調達しながら自治体のトップ、議会で多数派を形成して運営してきたことがプラスに出た可能性がある。

総じて言えるのは維新の支持は中道への支持でもあるということだ。自民は安倍政権以降、議員レベルでは右派が増え、右にポジションを取るようになった。逆に立憲は共産と組んだことで有権者から左派と見られるようになった。立憲の政策への評価は決して悪くはないが、旧民主党の顔とも言える政治家たちが出てくることに対しては有権者の拒否反応があり、さらに無党派層の野党共闘路線への支持は薄い。

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秦がいみじくも語っていたが「主要政党が真ん中から離れたため、維新は相対的に有権者一般の感覚と近い政党となり、かつ政権に対して是々非々の立場で票を伸ばしやすい状況になった」だけだ。