京都の製造業がグローバル企業となった4つの感性

また、京都はおいしいお店が多く、京都経済人は京都の飲食街で様々な議論をすることで、知見を深めています。この「京都の飲食街」の果たす役割は、とてつもなく大きいです。

京都は企業人だけでなく、観光客も多く、また大学の街であることから、世界中から高名な学者が京都に来訪します。

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そして京都の企業人は、こうした世界の知性の講演会を聞いたり、食事会を開いたりして勉強しています。それが京都企業の強さに繋がっています。

京都の代表的な企業である堀場製作所の堀場会長は、京都企業には四つの感性があり、それが強みになっているとしています。

一つ目は人のマネをしないという考え方です。京都という、盆地の限られた空間のなかで人と共生するためには、他人の仕事を邪魔するのではなく、自分にしかできない仕事を行うべきだ、という考え方があるとしています。

確かに喧嘩をしないためには、競争しないという戦略は一理あり、そのためには新しい市場に出ていく必要性があるといえます。

白と黒の間にあるグレーゾーンを尊ぶ

二つ目が目に見えないものを重視する考え方です。京都の生活文化のなかには、白黒つけずに灰色を大切にするという文化があります。論理の積み重ねで、白か黒かというわかりやすい言葉で理屈を述べるのではなく、白と黒の間にあるグレーゾーン、曖昧さを尊ぶのです。

確かに現実は様々なことがあります。グレーゾーンを大事にすることは会社が生き残るためにも重要といえるでしょう。

三つ目が事業を一代で終わらせず、受け継いでいく考え方です。他に追随したり、流行を追ったりせず、本業以外の投資に一切手を出さないことで会社の持続性を高めるというビジネスモデルです。

京都は長寿企業が多く、その秘訣ひけつがきちんと伝承されているところがあります。関西の経営者とお会いすると、規模よりも永続性を大事にする方が多く、それが京都を含む関西企業の魅力となっています。

四つ目が循環とバランスという考え方です。一つのことのみに注力するのではなく、経営資源の分配をバランスよくすることの重要性を力説しています。これもバランスの良さが長寿企業になるために重要だという思想があるように思えます。