小学6年の女児に性行為を強要、300万円で示談に
ある日、さえが仕事から帰ってくると、近所に住む小学生の保護者と名乗る夫婦が自宅を訪ねてきた。
彼らの話によれば、小学6年生の娘が幸也に身体を触られ、性行為を強要されたと訴えているという。さえは身体から血の気が引いて行くのを感じた。
幸也に事実を確認すると、全く悪びれた様子もなく、
「向こうがやりたいっていうから相手してやっただけ!」
と開き直るのだった。被害者は、近所に住む小学生の女の子で、近所をフラフラしている幸也によく話しかけていた少女だった。暇を持て余している幸也は、少女にジュースやお菓子を買ってとせがまれれば買い与え、さえが留守の間、自宅に少女を連れ込んだことも認めた。
さえは何とか警察沙汰にならないよう保護者との示談交渉を弁護士に依頼し、300万円の支払いと、息子が少女に二度と近づかないよう母親が監視することを条件に示談が成立した。さえは、胸を撫で下ろしていた。
「性犯罪って一番、世間体が悪いじゃないですか…。そんなことになったら、私たち家族も恥ずかしくて生きていけません…」
幸也は絶望的になる母の様子に改悛の情が芽生えたらしく、再び大学を受験する気になったのだという。さえは性犯罪者になりかけている息子を立ち直らせるため、息子の行動を監視せねばと長年勤務した会社を退職することにした。
さえが毎日自宅にいるようになれば、幸也は家に女性を連れ込むことはできない。幸也は明け方まで起きていることが多かったことから、さえも幸也が寝るまで就寝することはなく、幸也が出かける時は、密かに尾行するようになった。
息子が信じられず、探偵を使って監視
幸也は、電車でよく若者が買い物をするような百貨店やゲームソフトの専門店などに足を運んでいた。夕飯の頃には自宅に戻っており、夜は静かに部屋で過ごしていた。
さえが尾行を始めてから半年後、煙草を買いに行くという幸也をいつものようにつけていくと、幸也は小学校の方に向かっていた。ちょうど夏休みでプールが開放されているらしく、子どもたちのはしゃぐこえが聞こえてくる。プールの帰りなのか、大きなビニール袋をぶら下げた、髪の毛が濡れている少女たちの集団が現れた。
さえは鼓動が早くなるのを感じた。幸也の部屋には、少女の水着の写真が沢山あるのを知っていた。事件を起こした相手も小学生の少女だった。幸也は少女を物色しているのではないか……。
そんな想像が頭をよぎると、さえは走り出し、息子の側に駆けつけ腕を掴んだ。
「なんだよ!」
幸也はさえの腕を振り切ると、さえは腰を強く打ち、立ち上がれなくなった。通学路での騒ぎに、パトカーが駆け付け、さえは救急車で運ばれる大惨事となってしまった。この日、幸也は、図書館に向かっていたというが、さえは信じることができなかった。しばらく自由に歩くことができなくなったさえは、ついに息子の尾行を私立探偵に依頼することになった。