正座3時間で得たものとは

あれこれ上司が指示しないことで、人の心を慮り、顧客や同僚との「つながり」を常に考える頼もしい従業員が生まれる。

営業スタッフ主任・坂本進二氏と門田真季氏。従業員間の濃密なコミュニケーションの結果なのか、社内結婚が大多数を占める。

「何かのマニュアルを与えればミスは確実に減るでしょうし、売り上げは簡単に伸びるでしょう。しかし逆に従業員の思考が停止してしまう。お客様へのよりよい応接を自分自身で模索するプロセスや失敗の中にこそ、大事な気づきがある。そんな経験と努力を通じて従業員には人生の勝利者となってほしいのです」(大原)

入社2年目の営業スタッフ・門田真季は入社9カ月の頃、休暇を利用して東京ディズニーランドへ行った。

すると、そこへ会社から緊急電話。契約書への実印捺印の依頼を契約者とその親族へ手紙1つで済ませようとしたことが、親族の逆鱗に触れたのである。高知にトンボ返りした門田は単身クルマで2時間かけて親族宅へ。正座で説教を3時間聞いた。軽率だったのは自分。言い訳はせず真摯に謝罪した。すると契約者の親族は全く想定外の話をはじめた。

「私も、あんたからクルマ買いたい」

契約解消も覚悟した門田だったが、誠実な姿勢が実を結び、余計に1台売れてしまったのだ。

何も教えないのだから当然、新人は失敗する。しかし、「失敗を強いモチベーションに変えられるのも、自ら学ぼうとする姿勢がなくてはできない」(大原)のだ。

ある男性客からは、こんな手紙が送られてきた。

「ネッツトヨタ南国で私は幸せをいただきました。いつかまたこちらで新車が買えるように、毎日を積み重ねていきたい」

売る側も買う側も気持ちいい、感動的なショッピング。言ってみれば、ストーリーのある買い物をするため、週末には遠く本州から駆けつける顧客も少なくない。

「お客様の気持ちを汲む、察知する。そうした習慣を従業員たちが身に付け連携していけば、いつもは修理や車検など用事があるときだけ来店するお客様も、自然と当社のファンになってくださり、気軽に『ちょっと寄ってみようか』となる」(横田)