当たり前の日常の価値を忘れたくない

移植日の4月14日は、移植患者にとっては第2の誕生日。臍帯血の入った太いシリンジを持った担当医MY先生の手元を思い出し、臍帯血ドナーさんに感謝します。近畿地方で生まれた当時1歳のA型の女の子の臍帯血をいただいたことで、私は生き延びることができました。その女の子とお母さんへの感謝の気持ちで、毎年この日は西に向かって頭を下げます。

高山知朗『5度のがんを生き延びる技術 がん闘病はメンタルが9割』(幻冬舎)

こうして振り返る機会があると、お世話になった医師や看護師さん、ドナーさんをはじめとするみなさんへの感謝の気持ちが蘇るとともに、今の当たり前の日常が、どんなに貴重でかけがえのないものかを改めて実感できます。

人間は忘れていく生き物です。あんなに辛かった経験も、時が経つにつれ、その記憶は少しずつ鮮明さを失い、ぼやけたものになっていきます。そして今の生活を、当たり前だと誤解して過ごしてしまいます。

でも、記念日をお祝いすることで、辛かった経験を思い出すとともに、その辛い経験を乗り越えたからこそ、当たり前のように見える今があることを再確認できます。

だから、こうした記念日は私にとって、今の幸せを実感できる貴重な機会となっているのです。

関連記事
【第1回】1歳の女の子のへその緒が命を救ってくれた…「免疫力ほぼゼロ」からスタートする白血病治療の壮絶な22日間
老齢医療の現場で医師は見た…「元気なうちにやっておけばよかった」と多くの人が死に際に思う"後悔の内容"
「死に至るがん」トップ3は肺、大腸、胃…「毎年、がん検診を受けていれば大丈夫」の大誤解
7割の人はがん終末期でもひどい痛みがない…がん専門の精神科医が恐怖と戦う患者に伝えている意外なデータ
「お母さん、ヒグマが私を食べている!」と電話で実況…人を襲わない熊が19歳女性をむさぼり食った恐ろしい理由