ただの便秘かと思ったが…

夫は、「骨転移の痛みがかなりあるので、それに加えて抗がん剤での体調不良はキツすぎる。それに抗がん剤は、骨転移には効果ないんじゃないのかな?」と言い、抗がん剤治療をしないことを決めた。

夫は大好きな店のラーメンも、食べきれずに残すようになってしまった。

6月17日。朝起きたら夫の歯に血が固まったような茶色いものがたくさんついていた。夜中に痛みに耐える為、歯を食いしばった時にできたもののようだった。

すぐに病院に連れて行くと、ノイロトロピンという薬を点滴してもらった。すると夫は、少しだけ痛みがやわらいだようだ。

しかし翌日、痛みが全身に広がった。

6月24日。夫が何度もトイレにこもる。肩を貸さないと歩けず、自分で拭いたり洗浄したりすることができないため、笠間さんもトイレに付き添わなければならない。

夜中の2時半。高校生の息子が夫のトイレの付き添いを代わってくれた。

「ママがダウンしちゃったらどうしようもないから、病院行ったほうがいいよ」

そう息子に言われ、朝イチで夫を入院させようと思い、主治医に相談する。入院するにあたりレントゲンやCT、血液検査などをした結果、便秘だった。

「医療用麻薬は便秘になるって聞いていたのに、夫は便秘対策の薬は飲んでなかったみたいです。けれど入院させてもらえてほっとしている自分がいました……」

6月25日。面会に行くと、

「看護師が怒る、帰りたい」

と夫。

「確かに対応してくれた看護師さんは、言い方がきつい人でした。お金は払ってあるのに、言わないと着替えをもらえないそうで、部屋には水もありません。歯磨きもしていないと言うのでしてあげて、主治医に話して、便秘が治ったら退院させようと思いました」

6月26日。笠間さんは、主治医と2人で話した。

「去年10月に切除し、4月のCTではなかったのに、昨日撮ったものにはまた肝臓にたくさん転移している。しかも肺にも転移がある。あと2週間くらいかもしれません」

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笠間さんは頭が真っ白になった。

「毎週のように通院していたのに、こんなに急に余命を宣告されるとは、思いもしませんでした」