大反対された健康餃子が大成功

その思いがメニューに結実したのが2018年から。

調理に使う油をラードから植物油に変え、「玄米」を取り扱い始め、店名にもなっている餃子は餡を見直した。

「それまでの餃子は食べると肉汁が溢れ出るものでした。それは主に豚の脂身によるものです。食べる方の健康を考えた時になるべく脂身を減らしたいと思いました。

調整と試食を重ねて、脂身を3割減らし、その分赤身を増やすことで、おいしさとのバランスを取ることに成功しました。それだけではなく、これまで以上においしい餃子が出来たという自負がありました。

しかし、従業員からは『餃子は看板商品。焼餃子だけじゃなく、生餃子を家で調理しているお客さまも多くいる。肉汁が溢れ出ることがなくなったらお客さまが離れてしまうのではないか』と大反対されました」

撮影=島崎信一
看板商品の餃子。豚の脂身を3割減らしその分赤身を加えた

それでもくじけず、「意外にさっぱりしておいしい。不評だったら戻せばいいから、とりあえずやってみようよ」と説得して始めたという。すると翌月、餃子の販売数が3割ほど伸びた。

玄米も大半の店長が『中華に健康を求めていない』と反対する中、「ウチはやってもいい」と話す一部の店だけで試験的に導入した。

すると、「あの店は玄米があるのにこの店はないの?」と話すお客さんも現れて導入店が拡大していったという。

現在は、ぎょうざの満洲の「チャーハン」(税込み550円、以下同)では白米と玄米を半々に使用。「ダブル餃子定食」(800円)や「焼餃子とライス」(550円)など定食は、白米か玄米を選ぶことができるようにした。

売り上げの35%がテイクアウト

ぎょうざの満洲は、筆者の生活圏にも複数の店があり利用してきた。生餃子の特売日には、のぼりや立て看板が店の前に置かれる。店に入ると巨大な冷蔵・冷凍庫が目につく。

「あれは『リーチインケース』という開閉トビラのあるショーケースで、冷蔵と冷凍の生餃子をそれぞれ入れて販売することができます。コンビニではおなじみですが、飲食チェーンでは約30年前に当社が最初に導入しました」

撮影=島崎信一
荻窪南店のリーチインケース

冷蔵庫の中にはラーメン用「生麺」(70円)や国産豚肉のチャーシュー(100gあたり360円)などもあった。店内飲食していても持ち帰り品が目当てで来店するお客さんも多い。

「特売日の『生餃子』は通常の日の2~3倍売れます。さまざまな商品を揃えた結果、売り上げの35%をテイクアウトが占めるようになりました」

長年親しまれたスープを大改革

2020年にはラーメンのスープを全面的にリニューアル。それまで使っていた豚骨や豚足の使用をやめて、鶏系(国産の丸鶏や鶏がら)を増量、魚介(昆布や鰹節など)、野菜(ねぎや玉ねぎなど)を合わせたトリプルスープに変えた。

玄米の導入や餃子の変更はうまくいったが、ラーメンのスープを変えるのが一番怖かったという。

「ぎょうざの満洲は、父が27歳の時に埼玉県所沢市の住宅街で始めた中華料理店『満洲里』からスタートしています。その時からずっと豚骨を使用したスープだったので、長年親しまれてきた味を変えることに大きな不安があったのです」

中華料理店にとってスープは生命線だ。ラーメンや定食のスープだけでなく、チャーハンやその他の中華メニューの味つけにも使われる。

撮影=島崎信一
スープも健康的な満洲しょうゆラーメン

筆者は「ぎょうざの満洲がチェーン展開を果たせたのも、スープの味を安定させられたから」と、先代社長が語った記事も読んだ。反対はなかったのか。

「父は決して頑固一徹ではなく、時代の変化に合わせた新しい取り組みに対しては柔軟性があり、合理化への思いも持っています。スープの改良に関しては相談しながら進めていきました」

幸い、このリニューアルもうまくいった。「鶏の旨味を感じるスープがおいしい」という利用客が増えたのだ。2020年の変更なので近年の業績も評価を裏付けるだろう。