埼玉県民に愛される「ぎょうざの満洲」の特徴
「どこかで外食したい」時の店選びは、その時々の気分や心理的予算にも左右される。特に1人や少人数では、手頃な価格で楽しめる中華チェーンを選ぶ人も多いのではないか。
この業態で近年、地道に店舗拡大をしているのが「ぎょうざの満洲」(本社:埼玉県川越市)だ。最新の売上高は96億円(2024年6月期)、従業員は約2400人となり、コロナ前2019年比で約115%に伸びた。
現在の店舗数は103店(2024年9月末時点)ですべて直営。本拠地の埼玉県(51店)以外に東京都(35店)、群馬県(6店)、神奈川県(1店)にも増え、関西(大阪府8店、兵庫県2店)にも進出している。
食材は自社農場や国内取引先から調達し、安心・安全にも配慮。価格の安さもあるだろう。1人飲みやソロ飯、競合チェーンとの食べ比べを動画サイトに投稿する人も目立つ。
外食店の競争が激しい中、なぜ支持を広げているのか。池野谷ひろみ社長に聞いた。
きっかけは父の病だった
「父(現・相談役の金子梅吉氏)が創業した会社を継いで、私が社長になったのが1998年。その時から安くておいしい食事を安心して食べられる店をめざしてきました」
池野谷ひろみ社長はこう振り返る(以下、発言は同氏)。
「現在のスローガンは『おいしい餃子で人々を健康で幸せに』。実は“健康で”の部分を入れたのは後年で、創業者の大病がきっかけです」
10年ほど前、現在は元気な金子氏が心筋梗塞で倒れて入院したのだという。
「入院中に主治医の先生から、父の普段の食生活を聞かれました。『試食も兼ねて毎日ラーメンと餃子を食べています』と答えると、『毎日は食べ過ぎ。あなたも同じ食生活をしているのなら動物性脂質の取り過ぎで動脈硬化の原因になりかねない』と指摘されたのです」
確かにその当時、池野谷社長自身は健康診断で高血圧を指摘されていた。医師の言葉は中華チェーン店の経営者として耳が痛い話ではあった。無事、父は退院したが、池野谷社長が考えたのは、「おいしさをそのままに、お客さまが毎日召し上がっても安心できるレシピに切り替えるべきではないか」ということだった。