かぼすとすだちの胸を借りる
柑橘の大先輩である、かぼすとすだち。日向市役所のふるさと物産振興課の職員は、2024年8月には、都内の商業施設で開かれた、「すだち・かぼす・へべす和柑橘PRイベント」に参加。同じ柑橘系の生産関係者に受け入れてもらって実現したのだ。
日向の「いいもの」を世界へ
ただし、県などから一部補助金が交付されるとはいえ、へべすの栽培を始めてから収穫までの5年は、資金の持ち出しが続く、ひむか農園。内山さんは、販路拡大にも飛び回る日々だ。料理人などの反応はすこぶるよく、わずか1年ほどで居酒屋の「塚田農場」や「大庄グループ」、ミシュラン5年連続三つ星の京料理店「祇園さゝ木」などへの納入を次々と決めることができた。
「『動きが早い』と驚かれますが、大規模出荷が本格化するまでに、少しでも多くの取引先を開拓しなければと必死です。生産では品質の安定と量の拡大を優先しつつ、有機栽培を続けて付加価値を高め、海外にも販路を広げていくつもりです。へべすの認知度が高まることで、地元の生産者も増えてほしい。へべす発祥の地としての、日向のくらしがよりよいものになるよう、力を尽くしていきたいです」
有機JASの取得も目指すひむか農園。内山さんは、塚田農場との商談が印象的だったと話す。
「味や使いやすさだけでなく、『どんな土地で』『どんな人が』『どういう作り方をしているか』を深く質問されました。耕作放棄地を地元の人が、林業と畜産の廃棄物をアップサイクルした土や肥料で有機栽培している、というストーリーが相手に届いたと感じました。これは日本だけでなく、海外にも刺さる力を持つはずです」
地元の人たちと力を合わせながら、我がまちの「よいもの」を世界に届けたいと話す内山さん。その視界の先には、世界の食卓にへべすが並ぶ未来が見えている。