なぜ「ほぼ失明」するまで放置してしまうのか
1つ目の理由は、目そのものがたとえ視づらくなっても(機能が落ちても)、最終的に脳が自動的に補ってくれるからです。「盲点」を例に説明してみましょう。
人間には視えない範囲「盲点」があります。片目で視ると、必ず「視えない場所」があるのです。けれども、そのことに気づかないで済むように脳がうまく補ってくれています。それが脳の役割だからです。
緑内障のときも、それと似たことが起こります。
さらに、緑内障のときは視野の真ん中ではなく、視野の外側から欠けていくため、非常に気づきにくいのです。視野の欠損が中心部にまで迫って、ようやく「なんだか視にくくなった」と気づくのです。
2つ目の理由は、片目がたとえ視づらくなっても、もう片方の目が補ってくれるからです。試しに片目をつぶって生活してみていただければわかりますが、さして不自由なく暮らせます。
極端な例に聞こえるかもしれませんが……。片目がほぼ失明した状態でようやく眼科を受診し、「片目がほぼ失明していますよ」といわれて、自分の片目を手で覆い「あ、本当ですね」と気づく方もいます。
このように、目と脳の連携プレー、両目の連携プレーは非常に優れた機能です。
しかし、医療が非常に進んだ時代では、その優秀さがかえって仇になりかねません。つまり、目の病気の早期発見が難しくなっているという側面があります。
特に「目がいい人」は、目の変化をスルーしたり、自分の「視る力」を過信しすぎる傾向があります。そんな人にこそ「貴重な資産を守る」感覚で、目の定期検査や目のケアを重んじていただきたいと願っています。
40代以上の人は「目の機能低下」に要注意
近年、健康な状態と要介護状態の中間のステージを指す「フレイル」という言葉をよく見聞きするようになりましたが、ご存知でしょうか。
フレイルとは、わかりやすくいえば「加齢により心身が老い衰えた状態」のこと。海外の老年医学の分野で使用されている英語の「Frailty(フレイルティ)」が語源です。
「Frailty」を日本語に訳すと「虚弱」や「老衰」、「脆弱」などを意味します。
とはいえ、フレイルに早く気づいて正しく介入(治療や予防)を行えば、戻ります。
実は、目にもフレイルがあります。
目のフレイルは「アイフレイル」といいます。加齢による目の機能低下を指します。
日本眼科学会などの団体からなる「日本眼科啓発会議」では、次のように定義されています。
「加齢に伴って眼が衰えてきたうえに、さまざまな外的ストレスが加わることによって目の機能が低下した状態、また、そのリスクが高い状態」
つまり、加齢とともに眼球の構造と機能の衰えが生じ、その状態にさらにストレスが加わると目に障害が出現するというわけです。
それを放置すると、当然ながら常に視えづらくなり、さらに進行すると重度の障害に陥り、回復は困難となります。失明の可能性も高まります。
つまり、目の病気は徐々に進行していくため、若いうちからの予防が大切なのです。
40代以降の人は、特にアイフレイルに注意してほしいと思います。
問題が何もないうちから「アイフレイル」という言葉を理解しておくことも、「視る投資」となります。