消去法で「マシな候補」を選んだ自民党

ハリス氏では勝てない理由は、これら4つの「……ない」で括ることができる。

確かにハリス氏は、イスラエルをはじめ中東問題などに踏み込んだ言及がない。掲げている政策は、第3次オバマ政権、もしくは第2次バイデン政権と同じような内容だ。強固な支持層を持たず、「それを今言うなら、なぜこれまでやらなかった?」との批判も受けやすい。

筆者は、この記事をアメリカ・FOXテレビの知日派プロデューサーに見せ、感想を尋ねた。以下がその答えである。

「4つのうち(1)は主観にすぎませんが、(2)(3)(4)は端的にハリス氏の弱さを突いています。アメリカではコロナ禍の時期よりも生活が苦しいと答える人が半数近く。失業者も増えています。その点は、現職の副大統領という点がマイナスに働きます。

でも、日本の首相レースで、イシバさん、タカイチさん、モテギさん、それから若いコイズミさんでしたっけ? 全ての候補が4つのうちのどれか、人によっては複数が当てはまったはずです。だから、『The lesser of nine evils』(9人の候補のうち消去法でマシな候補を選択)で、イシバさんになったのではないですか?」

高市早苗氏の敗因はミソジニーではないか

筆者は、ハリス氏が勝てそうにない理由は他にもあると見ている。「THE HILL」が指摘した4つに加え、ミソジニー(misogyny)という要素を挙げたい。むしろ、これが1番ではないかとみている。

ミソジニーとは、「女性に対する嫌悪や蔑視」を意味する言葉で、性別や人種などを理由に低い地位に甘んじることを強いられる「ガラスの天井」を表すワードである。

高市早苗前経済安保相(63)が、先の自民党総裁選挙で惜敗したシーンを思い出していただきたい。

高市氏の敗因を振り返れば、日韓関係の悪化などを危惧した岸田文雄前首相(67)が、旧岸田派議員に「決選になったら石破に」と指示したことが大きい。

写真提供=共同通信社
自民党総裁選後に開かれた両院議員総会で手をつなぐ(左から)高市早苗氏、岸田首相、石破茂新総裁=2024年9月27日午後3時40分ごろ、東京・永田町の党本部(代表撮影)

ただ、選挙当日、自民党本部に詰めていた筆者は、高市氏の敗因について、1回目の投票と決選投票の間に行われた候補者による5分間スピーチで、「女性初の首相」に言及しなかったことにもあると感じた。