なぜ赤字の週刊誌を潰さないのか
とある週刊誌のベテラン社員は「『あーついに底が抜けたかぁ』と思ったらまた底が抜けた。もうそれを繰り返している」と話す。現場も出版すればするだけ部署としての赤字額を増やしていく週刊誌の作成になかなかモチベーションを保てなくなってきているという。
「昔は週刊誌は花形部署でした。新卒入社の中でもトップの人材が週刊誌の編集部に配属された。それが今や新卒の配属がゼロの年もあります。われわれ週刊誌に残された最後の役目とは、会社の『お侍さん』としていざとなったら会社を守ることです。週刊誌の言論機能は国など権力に対する抑止力にもなるし、交渉材料にもなります」
たとえば、週刊誌にスキャンダルを書かれたくないアイドルは、週刊誌を持つような大きな出版社で写真集を出版する傾向にある。
そういえば2022年9月14日、東京五輪のスポンサー選定をめぐる汚職事件で大手出版社KADOKAWAの角川歴彦元会長は東京地検特捜部に逮捕されたが、KADOKAWAに週刊誌はない。当時、講談社もスポンサー候補だったが、最終的に辞退した。森喜朗氏は講談社、とくに『週刊現代』をよく思っていなかったようで、「講談社だけは絶対、私は相容れないんですよ」などと当時不満を漏らしていたそうだ。
だが、そういう部数に表れない役割を持っていたとしても、会社内でも週刊誌編集部に対する風当たりは厳しくなってきている。
マンガ編集者に言われたひと言
別の週刊誌の元記者は「別部署で漫画編集をしている後輩に『少なくとも自分の給料分くらい稼ぎましょうよ』と言われるんです。『じゃあお前、この環境で週刊誌売ってみろよ』そう言いたくても、ぐっと我慢しました」
そして「もう紙は、次の編集長に引き継いだらそこで最後かな」とぼやく。それが現場の感覚だ。
それでもなぜ出版社は週刊誌をやめられないのか。正確にいえばさまざまな週刊誌がこれまで廃刊してきているわけだが、なぜ一部の週刊誌は赤字がひどくなってもなかなかやめられないのか。
先述の小倉健一氏は「大きな週刊誌ほど、ぶら下がっている関係会社や部署が多すぎる」と解説する。
「たとえば、デザイン会社や印刷会社を子会社として持っていれば週刊誌がなくなることで子会社の仕事がなくなります。親会社は漫画という別の食いぶちがあるかもしれませんが、子会社にとっては死活問題です。社内にもさまざまな関連部署があり、週刊誌をなくすことで大きなハレーションが起きることを嫌がっています」