加工肉は「発がん性がある」と分類されている

2007年に出された世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究協会(AICR)による疫学研究の報告書によると、レッドミートと呼ばれる牛や豚、羊などのいわゆる“4本足の肉”や、ソーセージやベーコン、サラミなどの加工肉の摂取は大腸がんのリスクを上げることが「確実」と判定されており、赤肉は調理後の重量で週500g以内、加工肉はできるだけ控えるようにと勧告されています。

IARC(国際がん研究機関)では、加工肉を「ヒトに対して発がん性がある」、レッドミートを「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類し、毎日50gの加工肉摂取が大腸がんのリスクを18%増やすと発表しています。

欧米のがん研究では、豚肉や牛肉などの赤肉や加工肉には「人に対して発がん性がある」と判定。また、食物繊維を1日10g未満しか摂取していない人たちで大腸がんリスクが高くなったと報告されている 出所=『腸内細菌の科学

そして、飲酒は確実に、肥満はほぼ確実に大腸がん発症のリスクを上げると評価されています。ほかにも欧米の疫学研究によると、人工甘味料を用いたダイエット飲料の摂取が多いことがリスクになると出ています。

腸内の硫化水素によってがん細胞が増える?

こういった食品がリスクになるのは、加工肉やダイエット飲料に含まれる成分が腸内細菌に影響を与えて、腸内で硫化水素が増えるからではないかと考えられています。大腸発がんと硫化水素に関しては重要な点がいくつか明らかになっていて、硫化水素の濃度が高いほどがん細胞が増殖しやすいようです。

腸内の硫化水素には腸の上皮細胞がつくり出す内因性のものと、腸内細菌がつくり出す外因性のものがあり、化学的には同一の物質です。大腸がん細胞では硫化水素を合成するいくつかの遺伝子の発現が亢進し、自ら腸内の硫化水素を増やしているなど、がん増殖における硫化水素ならびにその関連活性種のシグナル伝達への役割については、今まさに多くの研究が進められています。

一方、外因性の硫化水素は、腸内細菌の中でも硫酸塩やタウリンを基に硫酸還元菌が生成することが知られています。タウリンは、肝臓から分泌されるタウリン抱合型胆汁酸から遊離するタウリンの比率が多いとされています。