元気な高齢者は普段、何を食べているのか。京都府立医科大学大学院の内藤裕二教授は「日本有数の長寿地域である京丹後地域では、豆やイモや根菜類、全粒穀類や海藻といった食物繊維を多く含む食材を毎日食べる人の割合が高かった」という――。
※本稿は、内藤裕二『健康の土台をつくる 腸内細菌の科学』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「百寿者」がたくさん住む京丹後地域のナゾ
私たち京都府立医科大学では、2017年より国内有数の長寿地域である京丹後地域の住民を対象に長寿コホート研究(観察研究)を行っています。京丹後地域は、100歳を超える百寿者の割合が全国平均の約3倍という長寿地域です。
この地域に住む人の腸内細菌を、それ以外の地域(研究では京都市内)に住む人と比べると、やはり、寿命短縮に影響する可能性のあるプロテオバクテリア門が少なかったのです。
また、65歳以上の高齢の住民を対象に暦年齢に影響を与える腸内細菌叢の解析を実施した結果、若さを維持している人に特有の3種類の菌の存在が明らかになってきました。
ロゼブリア属、ブラウティア属、アナエロスティペス属というすべてがファーミキューテス門のラクノスピラ科に属する菌です。
健康維持に役立つ「酪酸産生菌」
ロゼブリア属の菌は、野菜、果物、脂質の多い魚、ナッツ類、食物繊維が豊富に含まれる穀類の摂取量が多い人の腸内で多いという報告があります。
ブラウティア属は、日本人の肥満していない人に多い菌で、大麦や玄米を食べていると増えやすいとされています。中でもブラウティア・ウェクセレラエという菌では、動物試験でこの菌の摂取により肥満や糖尿病が抑制できることが報告されています。
特に注目すべきは、この3つの菌が酪酸産生菌であるという点です。ここ数年、腸内細菌がつくる酪酸をはじめとする短鎖脂肪酸が、私たちの健康維持に大きな役割を担っていると注目されるようになってきましたが、この調査はそれを裏付けると考えてもいいのではと思っています。