※本稿は、笹井恵里子『老けない最強食』(文春新書)の第5章「老けない最強の乳製品」の一部を再編集したものです。
ヨーグルトはなぜ“最強食”なのか
前章で納豆を完全食と述べたが、乳製品のひとつ「ヨーグルト」も同様にほぼパーフェクトな一品だ。その理由をひとことで言うなら「腸内環境を整えるから」である。
かつて「腸活」がブームになり、腸を大事にしたほうがいいという印象はあっても、多くの人は単に“おなかの調子を整える”程度にしか受け止めていないのではないだろうか。腸には独自の神経ネットワークがあることから「第二の脳」と呼ばれ、他の臓器とは全く異なる特徴がある。老けない要素はもちろん、健康面にも大きな役割を果たしているのだ。
腸内環境に詳しい第一会最高顧問の後藤利夫医師がこう説明する。
「私たちの体のあらゆる器官は、基本的に脳や脊髄といった中枢神経からの指令で動いています。腸も自律神経の影響を受けていて脳にコントロールされていますが、腸にはそれ以外に『腸神経系』という独自の神経ネットワークがあるのです。
つまり腸は、脳からの指令がなくても、自分の判断で動くことができるのです。腸には私たちの体を守る免疫機能が集中しているので、腸が不健康だと免疫力が下がり、感染症をはじめさまざまな病気にかかりやすくなります」
腸内フローラに「いいお手本」は存在しない
反対にここが元気であれば風邪やインフルエンザをはじめとした感染症にかかりにくくなる、ストレスに強くなるなどのほか、脂肪の蓄積を抑えて肥満防止になる、血管年齢が若返るなど良いことがたくさんあるという。
この腸をコントロールしているのが、そこに棲む微生物、すなわち「腸内細菌」だ。腸内細菌は腸の中にびっしりと、まるで草原に多数の花が咲くように存在していることから腸内フローラ(腸内細菌のお花畑)と呼ばれている。
それではどういった腸内環境ならいいのかが気になるが、残念なことに誰もが世界にたった一つの腸内フローラを持つため手本はない。
「人は母親の胎内にいる時は無菌の状態です。そして産道を通って生まれてくる時にはじめて細菌と出会います。生まれてからは口から入ってくるものからどんどん細菌を体内に取り込みます。母親も、育つ環境も一人一人違いますから、腸内フローラも同じ人はいないのです。親子、兄弟間でも異なります」(後藤医師)