※本稿は、笹井恵里子『老けない最強食』(文春新書)の第5章「老けない最強の乳製品」の一部を再編集したものです。
牛乳のすごさはカルシウムだけではない
今回は「牛乳」を取り上げたい。乳製品の中でヨーグルトは、腸内環境を整える「乳酸菌」が含まれるのがメリットだが、牛乳の良さというと「飲みやすさ」が挙げられる。それに伴い、多くのカルシウムを摂取しやすいのだ。ヨーグルトは1カップ100g程度で、およそ120mgのカルシウムを含むが、牛乳の場合、コップ1杯(200ml)で、約230mgが取れる。
「牛乳はコストが低く、栄養密度が高い食品です」と、料理家で管理栄養士の小山浩子氏も言う。
「密度というのは100kcalベースで、そこからとれる栄養素という意味合いです。例えば油ならほとんどエネルギー(脂質)しかありませんが、牛乳の場合はさまざまな栄養素が含まれます」
牛乳にはよく知られるカルシウムだけでなく、必須アミノ酸のバランスがいいタンパク質、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンD、ビタミンEなども含まれる。
日本臨床栄養協会理事の大和田潔医師(あきはばら駅クリニック院長)は「牛乳は生活習慣病の予防にもなる」と説明する。
「乳タンパクがインスリン分泌を促すGLP-1の産生を高めるなど、血糖値と血圧に対して良い働きがあります。血管を含め、体を老けさせにくい食品といえますね」
適量は、1日にコップ1~2杯程度
また尿酸値を下げる効果もあるという。尿酸とは、体の新陳代謝の過程で出る老廃物にあたるもの。何らかの原因で排泄が滞り、体内に尿酸が増える(高尿酸血症)状態は、体を老いに向かわせてしまう。
「牛乳はこの尿酸の排出を促す作用があるのです」と大和田医師。
食事が炭水化物中心であったり、夜食が必要な人は一部分を牛乳に置き換えることで、必要な栄養素を補給しつつ、糖尿病をはじめとした生活習慣病になりにくい体になるだろう。
脳の機能を維持する役割もある。「牛乳を毎日飲む」と、「認知症の発症率が低下する」という国内の報告が多数あるのだ。
代表的なものは、福岡県久山町に住む認知症でない住民(60歳以上)を対象に、1988年から17年間追跡した久山町研究。牛乳・乳製品の摂取量で住民を四つのグループに分けて比較したところ、アルツハイマー型認知症の発症率は「牛乳や乳製品の摂取量が増加するほど低下する」という結果になった。だが、これは「飲めば飲むほど認知症の予防効果が高まる」と示されたわけではない。
海外では牛乳に関して膨大な論文があり、乳製品の過度の摂取はがんを発症するリスクを上げるという見方が強い(国内では「牛乳摂取とがん発症リスク」との関係に対して「データ不十分」の扱い)。また毎日何杯も飲めば、脂質の取りすぎにもなってしまうため、大量摂取はお勧めしない。一日にコップ1~2杯程度にとどめるのがいいだろう。