犯罪認知件数は2年連続で増加している

外食テロについても、無人化の影響がないとは言えないだろう。昨今の回転寿司チェーンは、予約から、入店、着席、注文、勘定まで、全てスマホやタブレット端末で済ますことができる。

大橋牧人『それでも昭和なニッポン 100年の呪縛が衰退を加速する』(日経プレミアシリーズ)

確かに、お客にとっては、一々店員を呼ばなくても、好きな時に好きな品を注文できて、便利で気軽になった。だが、店員とのコミュニケーションがないということは、直接、監視されないということでもある。だから、ちょっとした悪戯や悪のりで、醤油瓶の口を舐めたり、回っている寿司に手を付けてレーンに戻したり、という悪質な行為に走る者も出てくる。さらには、その様子をスマホで撮影して、SNSにアップして自慢する連中もいる。

店側が無人化に突き進む理由は、人手不足の緩和とコストダウンだ。しかし、一度、窃盗や外食テロに遭うと、直接の被害にとどまらず、風評被害も小さくない。個人店では、廃業に追い込まれかねない。

日本では、財布を落としても、ほとんど警察や駅などに届けられて、無事に返ってくることが多い――ネット上には、「戻ってくるなんて思わなかった。こんなことは我が国では考えられない」といった外国人観光客らの感激、称賛の声があふれている。

確かに、かつてそれは、日本の常識であり美点だった。だが、貧すれば鈍するとも言う。もう、日本人の正直さを当てにしたビジネスのあり方は通用しないのかもしれない。警察庁が2024年2月に発表した「令和5年(2023年)の犯罪情勢」によると、23年の刑法犯認知件数は70万3351件で、前年に比べて17%増加した。刑法犯認知件数は、02年の285万4000件をピークに、戦後最少となった21年の56万8000件まで、19年連続で減少したが、22年から2年続けて増加している。

安全・安心ニッポンに黄色信号といったところだ。

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