自治体や警察の“盲点”を突かれている
事件が起きた現場近くの住民が嘆いたように、従来、こうした地域では、あまり凶悪な事件は起きなかった。それが危険な場所になったのは、高齢化と過疎化が進み、コミュニティーの交流も減っていることが原因だ。
それでも、過疎地の多くの住民の安全に対する感覚は、平穏だった昭和の頃とあまり変わらず、自宅に鍵をかけない住民も多い。住民の意識に加えて、自治体、警察もこうした犯行について、あまり留意してこなかった。今、悪い奴らにその盲点を突かれている。
2023年には、関東地方などの閑静な住宅地で、いきなり刃物や鈍器で住民を襲う強盗事件が続発し、殺された被害者も出た。実行犯を操っていたのが、東南アジアに潜む複数のグループだった事実も世間を驚かせた。世界のデジタル化が犯罪の姿を変えつつある。
要人テロの危険性はアメリカ並みになっている
治安の盲点を突かれたといえば、2022年、23年と続いた元首相、現首相へのテロ行為も忘れるわけにはいかない。
2023年4月15日、岸田文雄首相が衆院補選の応援に訪れていた和歌山県内の演説会場で爆発事件が起きた。和歌山県警は、この事件で、木村隆二容疑者(24=当時)を威力業務妨害容疑で現行犯逮捕した。まるで再現劇のような出来事だった。岸田首相が襲われた爆発事件は、その状況が、前年7月、奈良市で参院選の応援演説中に安倍晋三元首相が銃撃された事件と、そっくりだったからだ。
国政選挙の地方遊説で、支持者らに紛れた被疑者が手製と思われる“武器”を使って襲った。岸田首相は難を逃れたが、その後の捜査で、爆発物の殺傷能力は予想以上に高いことが分かった。和歌山県の鄙びた漁港で起きた衝撃的な事件は、要人が一般市民に触れ合う現場での襲撃だった。
岸田首相が無事だったこともあり、メディアはほとんど報じなくなったが、問題の深刻さは少しも減じていない。
2024年7月13日には、米国のドナルド・トランプ前大統領が東部ペンシルベニア州で演説中に銃撃を受けた。トランプ氏は右耳を負傷しただけで、命に別状はなかったが、ほんの少しの差で、暗殺という最悪の事態に至るところだった。米国では、過去4人の大統領が暗殺されている。要人テロという点で、日本は米国に近づいているようだ。