150年間で氏名の捉え方そのものが変化した

こうした状況の下、令和5年6月2日、戸籍法の一部改正を含む「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立、9日に公布された。法務省はこの改正法が施行される予定の令和7年5月頃を目途に、戸籍に氏名の振り仮名を記載する制度の開始を予定しているという(法務省HP、令和6年4月現在の情報)。

尾脇秀和『女の氏名誕生 人名へのこだわりはいかにして生まれたのか』(ちくま新書)

読めないのなら戸籍に振り仮名を付ければいいじゃない――という、いわば“フリガナ作戦”が始まろうとしている。それは行政のデジタル化など、例によって管理する側の都合が第一だが、振り仮名には「氏名として用いられる文字の読み方として一般に認められているものでなければならない」という規律を設け、いわゆるキラキラネームに「認められている」か否かで線引きを行うことも企図されている。

これが如何なる結果や影響をもたらすか――もちろん、誰にも正確には予測できないが、新たな火種をはらんでいることはいうまでもない。

日本における人名文化のやり直し――近代氏名の誕生から、約150年が経過した。だが現代の氏名は、もはや当初のそれではない。氏名は社会の変化とともに、様々な問題を抱え込んでしまったのである。

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