子供にはどんな名前をつければいいのか。命名研究家の牧野恭仁雄さんは「『キラキラネーム』はやめたほうがいい。名前で性格や生き方が決まるわけではないが、他人や社会に背を向けたような名づけをすれば、その感覚、姿勢が子供に伝わってしまう」という――。
幼い息子と手をつないで歩く父親
写真=iStock.com/Poravute
※写真はイメージです

キラキラネームは新しい流れではない

まず、つぎの名前をざっと見てほしい。

丸楠(まるくす) 森英児(もりえーる) 亜歴山(あれきさんどる)
武良温(ぶらうん) 真柄(まーがれっと) 美可悦(みかえる)
彼得(ぺーとる) 利茶道(りちゃーど) 六十里二(むっそりーに)

荒木良造『名乗辞典』(東京堂出版)

「あ、平成の時代のキラキラネームか」と思う人も多いかもしれない。でも、これらは昭和のはじめにつけられた名前である。こうした奇抜な名前というのは、平成の新しいトレンドのように言われていたが、じつは古い名づけのひとつなのである。

有名なところでは、森鴎外や与謝野晶子が子につけた名前も当時としては珍名だった。奇抜な名前は古くからあちこちで見られたが、大勢の人がマネをして流行になることもなかった。

戦後になってから、1950年代~80年代あたりまでは、奇抜な名前はあまりつけられなかった。その時の親たちは、慢性的な貧困と飢餓の時代に育ったうえ、日中戦争や第2次世界大戦というすさまじい体験をした人たちだった。

平成に増えはじめ、令和に入って下火になった

ところが平成になってから、1990年代以後、奇抜な名前は再び増えはじめた。

皇帝(しいざあ) 一二三(わるつ) 今鹿(なうしか)

などといった名前がTVや雑誌で紹介され、キラキラネームと呼ばれ、今度はマネをする人が増えてひとつの流れになった。つけた親たちはおおむね1960年代なかば以後、高度成長からバブル期にかけて成長した人たちである。

令和になってからは、平成の時に見られた極端なギャグのような名前は下火になった。そんな名前を見ても誰も驚かず、陳腐にさえなっている。

今、名づけをしている親たちは、平成の世に育っている。平成は経済が低迷し、雇用も安定せず、災害も多発した時期である。

このように奇抜な名前というのは、多かった時期と少なかった時期とを比較するとわかってくる。先の見えない、緊迫した社会にいた人はあまり奇抜な名前はつけず、安定した環境の中で計画的な生き方をしてきた人たちが奇抜な名前が好きになる、という対称的な傾向が見えてくるのである。