基準は「音・訓・名乗り」の3種類の読み方にするしかない
では新たに生まれた子の名前のふりがなはどうなるのか。すでにつけられた名前については何でもOKで、赤ん坊の名前にだけ条件をつける気なのか。
それは法律上、できないことではない。
これまでは名前の読み方について法律上の規定はなく、役所に審査義務もなかった。今回は「一般にみとめられているもの」という条件が出されたので、意味はよくわからなくても規制が生まれたことになり、役所の審査対象にもなる。
ただ規制をするならするで、具体的な基準がなければ個々の名前を判断できない。
「例えばこんなふりがなはダメですよ」というリストを配布する案もあるそうだが、名前というのは無数に作れるから、そのリストにない名前はいくらでも出生届に書かれて出てくる。つまりダメだという例を挙げても役には立たないのである。
基準というのは、出生届を出す前に誰もが調べられなければ意味がない。そういう全国一律の客観的な基準となれば、それは正式な辞典(名づけの本やサイトではない)に載せられている、「音・訓・名乗り」の3種類の読み方にするしかないのである。
その範囲ならよろしい、と決めれば、その後の日本人の名前はすべて正しい読み方になる。特別大変な作業もいらず、金もかからない、簡単なことである。
令和の時代にもキラキラネームの残り火がくすぶっている
令和の時代は、かつてキラキラネームと呼ばれたような奇抜な名前の流行は去ったが、まだ残り火はくすぶっている状態ではある。例えば、
などのように、耳で聞いたら普通の名前でも、無理な漢字をあてたため読めない、という名前は依然として多く、減る気配はない。
なぜなのか。その背景には何があるのか。
今の時代は、個人情報をもらすと、どこで悪用されるかわからない。多くの人が社会そのものを警戒している。自分のことを人にくわしく知られたくない。だから友人知人にしか読めない名前のほうが何となく安心できる。そのことが読めない名前を増やしているのではないか。
だとすれば話はわかる。社会が安全な場所でないことは、もはや世界の常識である。
ただ、そうした個人の感情とか、また役所の事務がどうこうという話の前に、人の名前というのは、基本的に大切なことがある。