「神宮外苑再開発問題」に揺れるヤクルト
現在の築地エリアは東京メトロ日比谷線の築地駅と都営大江戸線の築地市場駅しか最寄り駅はないが、再開発計画にあわせて、新線の計画も進行中。さらには巨人の重要パートナーである日本テレビのお膝元である汐留や、サラリーマンの多い新橋から来場できるように、遊歩道やデッキの建設も見込まれているという。銀座からも近いため、新たな客層を獲得できるチャンスも広がる。築地への移転は、メリットが多いというわけだ。
巨人と同じく東京をフランチャイズとするヤクルトも、本拠地の明治神宮野球場(神宮球場、東京都新宿区)一体の再開発計画に揺れている。
神宮球場は、宗教法人明治神宮が保有しており、ヤクルトは年間約10億円の使用料を支払っている。ただ、創建当初に東京六大学野球連盟が資金提供などで尽力したため、今でも学生野球のスケジュールが最優先。大学野球とヤクルトの主催試合がバッティングした場合は、試合開始時間が30分遅れたり、試合前練習を隣接する室内球技場などで行ったりするなど、何かと不便を強いられる。使用契約が1年ごとの更新なだけに、本拠地移転騒動もたびたび取り沙汰されてきた。
このままでは「神宮離脱」の可能性?
2014年から3年かけて耐震補強工事を行うも、2026年には創建100年を迎えるとあって、老朽化は否めない。バリアフリー未対応や歩車分離ができていないなどの課題も抱えている。ただ、新球場は隣接する秩父宮ラグビー場の跡地に建てられる予定なので、アクセスはほぼ変わることはない。ファンにとってはむしろ歓迎されるべきなのだが、事態はそう簡単ではない。
再開発によって既存樹木の伐採やオフィス・ホテルが神宮外苑にできることに反対する声も根強く、完成予定は当初の2027年から2031年に、新秩父宮ラグビー場の整備を含む再開発全体の完了時期も2030年から2035年に延期となった。今後、工期に遅れが出るなどした場合、ヤクルトが国鉄時代の1964年から使用してきた神宮を離れる可能性もゼロではないだろう。
築地市場跡地も、地下には都が旧跡に指定している江戸時代の庭園「浴恩園」が眠っている。寛政の改革で知られる老中の松平定信が屋敷に築いたとされる幻の庭園で、再開発に先立って行われた予備調査では、池の護岸とみられる石積みが発掘されたという。今後の調査、発掘次第では、こちらも予定が大幅に変更となるかもしれない。
さまざまな利権や思惑がはらみ、一筋縄ではいかない新球場建設。誰もが納得できる着地を願うばかりだ。