日本シリーズをホームで戦えなかった

コロナ禍の2020年には、前代未聞の事態も起こった。例年であれば7月に東京ドームで行われる社会人野球の都市対抗が、東京五輪の影響もあり、早い段階で11月22日からの開催に日程が変更された。ただ、プロ野球がコロナの影響で6月開幕となり、日本シリーズの日程も11月21日からにずれたため、都市対抗野球とバッティングしてしまったのである。

異例のペナントレースを制した巨人は、ソフトバンクとの日本シリーズで東京ドームを使用することができず、京セラドーム大阪からの開幕をしいられ、4試合でわずか4得点、41三振を喫し、4連敗の屈辱を味わうことになる。もし巨人が自前球場を持っていれば、ここまでのワンサイドゲームにはならなかったかもしれない。

悲願の新球場建設へ、読売グループが目をつけたのは、「築地場外市場」の跡地だ。2018年に豊洲へ市場機能を移転した後、2019年に東京都が、国際会議場を中心に「食のテーマパーク機能を有する新たな場とする」などとした「築地まちづくり方針」を策定。

一度は計画が頓挫したが、東京五輪・パラリンピックの延期などに伴い、都は方針の見直しを行い、2022年には「交流により、新しい文化を創造・発信する拠点」をコンセプトに事業者を広く募集。そして今年4月、三井不動産を代表とした企業連合に、読売グループも名を連ねた。

DeNAに勝利し、喜ぶ巨人ナイン=2024年9月19日、東京ドーム
写真=時事通信フォト
DeNAに勝利し、喜ぶ巨人ナイン=2024年9月19日、東京ドーム

築地の広さはなんと「東京ドーム約4個分」

築地市場跡地には、読売が喉から手が出るほど欲しかった都心の広大な敷地が広がる。再開発エリアの面積は実に東京ドーム約4個分の約19万m2。総延床面積は約117万m2で、スタジアムのほかに商業、ホテル、オフィス、レジデンスなど9つの施設および棟が整備される。

来年度から一部の施設で着工し、全体の完成まで14年の長期にわたる大規模開発だが、スタジアムを含む多数の施設は2032年度に整備を完了する予定。2034年の球団創設100周年に合わせて本拠地を移転すれば、大きな話題を呼ぶことは間違いない。東京ドームを大改修した理由も、あと10年使用すると考えれば説明がつく。

アクセス面はどうか。東京ドームは中央・総武線と都営三田線の水道橋駅、東京メトロ丸ノ内線や南北線の後楽園駅、都営三田線と都営大江戸線の春日駅からも至近距離と、鉄道アクセスに優れている。