人工芝を嫌って渡米した松井秀喜

東京ドームは、30年の“リミット”を超えた2022年、総額約100億円を投じ、換気能力の向上や、国内最大規模となる横幅126mの大型ビジョンを設置するなどの大改修を行った。しかし、いくら改修しようとも、基本的な設計は変えることはできない。

グラウンドは両翼100m、中堅122mと国際規格こそ満たしているが、左中間、右中間フェンスの膨らみが小さく、ともに110mと12球団のフランチャイズ球場としては最も短い。気圧の関係で内部の空気が乾燥するため打球も飛びやすく、今では「本塁打の出やすい球場」へと様変わりしてしまった。

また、天井がプレーの妨げになることもある。デーゲーム時に野手が飛球を見失ったり、高く上がった打球が直撃したりすることも少なくない。かつて巨人で活躍した松井秀喜は、全面人工芝を嫌い、体への負担が少ない天然芝が多いメジャー移籍を選択。38歳まで現役を続けた。米国ではドーム球場から、屋根なし天然芝球場への回帰がトレンドになっている。近年は日本でも米国にならい、本拠地の「ボールパーク化」への機運が高まっている。

新球場を建設した日ハムは「93億円」も爆増

新球場の建設は、読売が長年思い描いてきた夢でもある。なぜか。巨人は、東京ドームを間借りする限り、所有者である「株式会社東京ドーム」に年間25億~30億円ともいわれる多額の球場使用料を支払わなければならないからだ。さらにはチケット、グッズ販売、飲食などで得た興行収入の一部も、ロイヤリティとして納める必要があるため、いくら集客面で好調でも、球団経営を圧迫し続ける。

12球団では阪神、中日、ソフトバンク、西武、オリックスが事実上、自前の球場を保有し、2023年には、日本ハムが札幌ドーム(北海道札幌市)からエスコンフィールドHOKKAIDO(北海道北広島市)へ移転した。

日ハム悲願の自前球場として北広島市にオープンしたエスコンフィールドHOKKAIDO(2023年3月)
撮影=プレジデントオンライン編集部
日ハム悲願の自前球場として北広島市にオープンしたエスコンフィールドHOKKAIDO(2023年3月)

日本ハムも巨人と同じく、札幌ドームを間借りしていたため、多額の使用料などを支払っていたが、エスコンフィールドは、子会社の「ファイターズ スポーツ&エンターテイメント」が所有・運営しているため、金銭的負担を実質的に負うことはない。開業初年度の売上高は、158億円だった2019年の札幌ドーム時代から251億円と大きく伸びた。かつて後楽園球場、東京ドームでダブルフランチャイズ制を敷いていた2球団は、対照的な道のりを歩んでいる。

巨人は他球団が球場を所有化する現状について、指をくわえて見ているほかなかった。郊外ならともかく、都心に本拠地を構える場合、新球場建設に適した広大な土地がなかったからだ。ただ、球界関係者が「巨人軍の親会社の読売新聞グループにとって、自前球場は長年の悲願」と明かすように、諦めることなく移転の機をうかがっていた。