ピアノやソルフェージュ、作曲は合格ライン
1度目の入試に落ちた私は、早速、開示請求して採点を確認しました。
2次試験4日間の音楽の実技や知識の試験、苦労したピアノやソルフェージュ、絶望から始まった作曲の得点は、総合的に見ると合格ラインを超えていました。とは言っても、15人定員で志願者数50人前後の中で、合格15人の中のギリギリボーダーラインくらい。それでも合格に限りなく近い成績だったことがわかりました。
2次試験全体で、唯一、マイナスの成績だったのはピアノの初見演奏。試験当日、初めて見る楽譜を試験官の前で弾くという試験。初見で弾くことも大変ですが、この曲自体、仮に練習を積んでいたとしても弾くのが難しいような曲が出ることもあります。
ですから、わりと多くの人がつまずく試験なので、かなりボロボロの演奏でも通る人はいる。ただし、“まったく弾けない”と落とされてしまいます。
1度目の試験は、教授5人が見ているという状況もあって緊張して手が震えてしまうほどでした。全然弾けず、止まっているのか弾いているのかわからないくらいの惨状でした。
「あのぉ……初見のね、練習ってこれまでにしたことありますか?」
教授の1人からそう言われてしまうほどの出来でしたから、これはかなり足を引っ張ってしまったはずです。
「現役合格」という夢は実現しなかった
ただ、やはり一番大きかったのはセンター試験で間違いありません。
国語は十分ボーダーを超えていたのですが、英語がボーダーの半分にも足りていませんでした。200点満点中50点くらいだったでしょうか。これではさすがに問答無用で不合格です。
結果的に、勉強をしてこなかった英語に、最後の最後に刺されてしまい、自信家の私もさすがにショックでした。最終まで残れていたわけですから、「やっぱり現役で受かるんじゃないかな?」と。期待するなというほうが無理です。
藝大がある上野から1時間半かけて自宅に帰ると、食事もそこそこに、そのまま布団にくるまりました。
「……補欠合格とかで繰り上げにならないかな」
そんな淡い希望を抱きましたが、藝大は、ほぼすべての受験生にとって第1志望。
合格した人が入学を辞退するケースは、海外の超一流音大に受かったなど、ごくごく稀なケースを除いて基本的にはゼロです。現実は甘くありませんでした。