作曲家の内田拓海さんは小中学校には行かず、高校から通信制に通い始めた。2浪して難関の東京藝術大学に合格し、26歳になった現在は藝大大学院に在学している。大学受験を振り返ると、「まったく勉強せずにセンター試験の国語と英語を受けたのだが、これが失敗の始まりだった」という――。(第3回/全3回)

※本稿は、内田拓海『不登校クエスト』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。

2023年12月、初開催した自身の“個展(コンサート)”でピアノ演奏する内田さん
提供=内田拓海
2023年12月、初開催した自身の“個展(コンサート)”でピアノ演奏する内田さん

義務教育を受けていないのにノー勉強で臨む

音楽の力は順調に着実についていったのですが、1次試験であるセンター試験対策をまったくしませんでした。「ホント?」と思われてしまうかもしれませんが、本当に1度も、参考書も過去問も開きませんでした。

センター試験自体は、国語と英語の2教科で受験できるのですが、2教科とも“完全ノー勉強”で試験に臨んでしまいました。

国語も英語も小・中学校で一度も勉強したことがないのに、です。

ご存じの方もいると思いますが、藝大では多くの学科において、センター試験の必要得点は決して高くありません。年度にもよりますが、5〜6割取れればボーダーラインという程度。それはやはり、実技や知識などの専門の能力のほうが圧倒的に重視されているからです。

あくまでも英語や国語は“一般的な高校生の常識程度のことがわかっていればOK”というスタンスなのです。

「試験のために勉強」がどうしても嫌だった

私自身、先にも書いたように本も好きでしたから国語――言葉や文章はむしろ好きですし、英語も英会話教室にしばらく通っていたくらいなので、決して英語そのものが嫌いなわけではありません。

では何が嫌だったのか? 試験のために単語帳を暗記したり、構文や熟語を覚えたりする行為がどうしても好きになれなかったのです。わかってもらえないかもしれませんが、“言語を学ぶ”というところからかけ離れた、何か強引な行為のような気がしてしまったんです。

そう書くと少し格好いいですが、つまりは受験のために英文法を覚えたりすることが面白いと思えなかったのです。勉強するならば、シャドーイングなど自分なりに“やりたい”勉強法があったのですが、受験勉強ですからとにかく期日までに詰め込まなければいけない。それがどうしても嫌でした。

そして、このことが受験の結果に大きく影響してくることになります。