AIと人間それぞれの担当分野

一方、その先のステップ2以降のデザイン作業については、プラグでは人が担当している。生成AIが提案するデザインには、既存のデザインのコピーや、各種の権利を侵害した案が紛れ込んでいる可能性が排除できない。ステップ2および3のデザイン作業を人が行うことで、生成AIの創造領域での利用につきまとう盗用問題を回避している。

一方で、デザイン案を絞り込む作業では、ステップ2でも評価用のAIを使用することが可能だ。この評価AIは、プラグが独自に実施してきた1020万人以上分の消費者調査の結果を機械学習のためのデータセットとして用いており、社外の調査や著作物等の権利を侵害する恐れはない。

「パッケージデザインAI」による消費者の評価予測の例(画像=プレスリリースより)

以上のようなAIの活用を通じて、プラグはパッケージ・デザインのトータルの制作時間を大きく短縮することに成功した。従来は6カ月ほどの期間が必要だったパッケージ・デザインの制作が、今では2~3カ月と、ほぼ半分の期間で完成するようになった。

AI導入の効果は、単なる時間短縮にとどまらない。パッケージ・デザインの制作は、案をつくっては選定を行い、絞り込んだ案をさらに練りあげては再び選定を行うというステップを繰り返して、デザインの完成度を高めていくプロセスである。AIの導入によって、プラグでは制作プロセスのスピードアップやコストダウンだけでなく、そこで生まれた時間的余裕を使って、デザイン案のバリエーションや評価の回数を増やすことも可能になった。これは最終的なデザインの完成度を高めるという、業務の根幹部分のレベルアップに直結する。

人間が思いつかないような案を出してくる

生成AIでデザイン案を制作することの効用は他にもある。AIは、人間が思いつかないような案を出してくることがしばしばある。

たとえば、「高さ1メートルのビール缶」といった突飛な案を、平気で提案してくる。あるいは、「10人乗りのフェラーリ」といった奇抜な課題を与えても、人間よりはるかに短時間でデザイン案を出してくる。AIを使うことで、人がつくるよりもはるかに幅の広がったデザイン案から、絞り込みをかけていくことができるのである。