クリケット観戦も暗算訓練の場

インド式算数が学校の正規カリキュラムから消えたことを憂慮して、家庭でもっと暗算に親しませようとする人たちも多い。

デリー近郊のグルガオン市に住むクマール家。家族みんなで車に乗っているとき、渋滞につかまった。車の中で、ただイライラしてもつまらない。そこでお父さんが、「四則演算を使って、前の車のナンバープレートで10をつくってみようよ」と声をかける。

そして親子そろって必死になって取りかかる。その姿は、電車の切符を買えば、「4ケタの通し番号の数字を加減乗除して10をつくる」といった遊びをしていた我々の子供のころの姿によく似ている。

夕食のカレー料理のときには家族みんなで、チャパティ(丸い薄焼きのパンで家庭料理に欠かせない)を使って、分数の時間に早変わりだ。お母さんが問題を出す。

「この1枚のチャパティを3つに分けてみましょう。さあ、そのことをなんて言うのかな?」

8歳のお兄さんにまじって6歳の妹も真剣そのもの。

「3分の1!」

「そうね。では、もう1枚のチャパティを4人用に切って分けてくれる? それをさらに半分に切ったらどのくらいの大きさになる?」

興味のあるものと計算を組み合わせたほうが、やる気が湧く。デリーから西北に450km、パンジャーブ州に住むキール家のシャウリャー君(8歳)はクリケットの大ファン。

そこでご両親は一緒にテレビ中継の試合を見ながら、「AチームはBチームの何倍得点をしている?」とか、「あと何点取ったら追いつくかな?」と暗算させるようにしている。ちなみにクリケットの試合では、得点は通常3ケタになる。