インド式算数を守る教師たち

正規のカリキュラムから外されてしまったインド式算数だが、今でも教えている教師はいる。アンジェリー先生もその一人だ。

「私自身、20×20のかけ算の暗記をし、暗算を繰り返すことで、きちんと『数学脳』が磨かれ、ハイスクールや大学の数学の授業でも苦労はしませんでした。だから、自分の生徒たちにも教えるようにしているんです。彼らの将来のために」

一応の目安は6歳(1年生)までに、1から4の段のかけ算を暗記させる。8歳までに9の段まで。そして理想的には20×20を5年生の10歳までに覚えさせたいと言う。

「ただどこまで徹底できるかはわかりません。昔と違って、夕飯抜きとまではいかないので……。少なくとも10歳までには12×12までは覚えさせたいのですが……」

時代の流れからか、アンジェリー先生のインド式算数の教え方も、夕食抜きというスパルタ式からゲーム感覚を取り入れ、より現代っ子に受け入れられやすいソフトなものに変わっているようだ。

こうした熱心なインド式算数の信奉者である先生もいれば、あくまでも正規カリキュラムにのっとった「ゆとり教育」を行う先生もいる。この教育格差が、PISAの散々な結果や、インド工科大学に進むエリート候補生とその他の学生の差を生み出す原因なのかもしれない。