イスラム圏の人口は今後も増え続ける

エマニュエル・トッドが『帝国以後』で指摘していることですが、高等教育を女性が受けるようになると出生率が減るという傾向があります。その最たる例は、中国やミャンマーです。逆に、今でも出生率が2.1以上あるのが、マレーシア、トルコ、イラン、インドネシアです。

イスラム教が普及している国においては、女性の高等教育の水準が上がっても出生率は極度に減少しません。別な言葉でいえば、拡大再生産が維持できるということです。そして、それらの国からの移民がこれから増えると予想されます。

今ヨーロッパで起きている移民問題は必然的なもので、経済の自由化によっていったん移民の流入がはじまったら、止めることは不可能です。いずれ日本がたどる道でもあります。

教育現場も新自由主義の影響は避けられない

格差の拡大が民主主義にどのような影響を与えるか、という点を考えてみましょう。多くの場合、政治においては民主主義が担保されますが、社会生活の実質は経済が動かしています。

経済の世界は民主主義的ではなく、自由主義が優先されます。これは株というシステムを見ればわかります。株は株主全員が平等というわけではありません。ある企業において、持っている株の数で会社の意思決定に大きく関与できるかどうかが変わります。これは、経済の意思決定は「力」であることを意味しています。

一方、政治における意思決定というのは、従来型の民主主義が維持されます。しかし、新自由主義においては、経済がどんどんそれ以外の領域を侵食していきます。そうなると、不平等と格差が拡大するのは避けられなくなります。

写真=iStock.com/francescoch
※写真はイメージです

そのいい例が受験です。日本では表面上、義務教育は完全に無償化されています。ところが実際は、義務教育だけでは、受験に十分に対応できる教育は受けられないことも多く、私的ファクターとしての学習塾や予備校というものの役割が大きくなるわけです。

私立の中高一貫の進学校の場合、教育費(中学受験にかかる塾代を含む)に莫大な金額が必要になります。生徒の親の多くが、中学3年くらいまでに1000万円程度の教育費を使っているともいわれています。これだけの金額を、すべての親が投資することは不可能です。

この点から見ても、教育の現場で経済の「力」の原理が働き、格差が非常に大きくなっていることが理解できるでしょう。