ただでさえ「冬場の病院の受付」は地獄なのに…

その場合、もう面倒なので「全部“同意”を押しちゃってください」と説明してしまうこともあるというのだ。これではなんのための同意確認かわからない。そもそもカードリーダーは患者さん本人が自分だけで操作するのが前提のはずだ。

そこに本来なら医療機関の職員から十分な説明をした上での同意が必要な事項を、簡単な文言しか書かれていないタッチパネルにて同意させるという設計自体が間違っているのである。

事務職員のこれらの説明に、思わず私は天を仰いだ。秋以降はインフルエンザワクチン接種や、新型コロナワクチン接種でただでさえ来院者は増えてくる。そして寒くなれば、またコロナやインフルエンザの流行期に突入する。医療従事者でなくとも、医療機関を利用したことのある人ならば、毎年冬場の受付前がどんな状況になるかを、嫌というほどご存じだろう。

貴重な人員が割かれるなんてぞっとする

くわえて前回の記事でも述べたとおり、12月以降は「健康保険証廃止」という政府広報の脅しによって混乱する患者さんへの対応に追われ、ただでさえ受付業務はてんてこ舞いだ。その状況で貴重なマンパワーが「機械の操作説明係」として割かれてしまえば……。

考えるだけでぞっとする。政府肝いりの「デジタル化」が、かえって医療機関に負荷をかけることになるとは、なんとも皮肉なことだ。そして医療機関にかかった負荷は、そのままダイレクトに患者さんへ「待ち時間の超過」という格好で跳ね返っていく。

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けっきょく、マンパワーと多くの患者さんの便益を考えれば「マイナ保険証用の列」に職員が1人張りつくことは現実的ではないという話になるのである。列が長くなろうが仕方がない、落ち着いてご自分の番を待ってくださいということにするしかないのだ。

……ということが予測されるが、マイナ保険証にはとても満足している人、長蛇の列に並ぶことになろうが、前の人がまごまごしようがまったくイライラしない、いくらでも気長に待てるという人なら、そのままで良かろう。

問題は「マイナ保険証を安易に作ってしまったものの、こんなにトラブルが多いならもう使いたくない」「これまで早くて便利だったのに、列に並ぶことになるのは勘弁してほしい」という人がどうすればよいかだ。