毎年選挙があるが、国の最高指導者に適した逸材は毎年出てこない

問題は選挙がありすぎることです。衆議院・参議院の選挙制度は国法で決まっていることなので変更するとなると大掛かりですが、総裁選の時期や人選びは党内で決められます。

選挙で勝てる党首を選ぶと、鈴木善幸のような「なんであの人が?」という首相が生まれにくいですが、人気だけでも困ります。総理大臣とは国を率いる人です。国の最高指導者に適した逸材など、そこらへんにゴロゴロころがっていません。毎年のように出てくるものではないのです。自民党には、そういう自覚が足りません。そんな議論すらなく今まで来てしまいました。

「三角大福中」や「安竹宮」の時代は自民党は万年与党でしたから「政策が変わらないのだから、みんなで代わりばんこにやればいい」という感覚でした。

その文化、小選挙区制の導入で大きく変わりました。小選挙区制は国民世論の影響を受けやすいので、国民が本気で怒れば一気に政権交代が起きやすいのです。だから、自民党は総裁(総理大臣である)に、国民的人気のある人しか据えなくなりました。

典型的なのが、緊急登板の森喜朗が不人気だとマスコミの寵児の小泉純一郎に代える、ワンポイントリリーフの福田康夫で総選挙をするわけにいかないから世論に人気のありそうな麻生太郎に代える、の二例です。

ちなみに、菅義偉首相は「菅では総選挙を戦えない」と燎原りょうげんの火の如く菅おろしが広がり引きずりおろされましたが、「相手が枝野幸男ならばわざわざ河野太郎を総理大臣にする必要はない」と岸田文雄が後継総裁になりました。これは小選挙区制の効用であり、自民党はそういう意味では改革しています。

野党に比べれば、自民党は総裁が首相になる気があるだけマシ

なんだかんだ言っても自民党は党首選挙があるだけ、そして、党首が首相になるつもりがあるだけマシです。民主政治を行う上で問題が山積みなのは、野党のほうです。党首選挙がない党もありますし、選挙があっても党首が本当に首相になる(気がある)かどうかよくわからない党もあります。

倉山満『自民党はなぜここまで壊れたのか』(PHP新書)

自民党総裁選に勝った者だけが総理大臣になる資格があるという、他の政党を二軍扱いする文化が、自民党政治家以外にも浸透しているのは、不幸だと思います。自民党にとっても。

自民党の総裁選は改善され、前よりは格段にクリーンで透明性のあるものになったし、総理大臣になるつもりがある人しか党首選挙に立候補しません。そして、党員は党首選挙において総理を選ぶのだという自覚があります。

それに比べると、野党のほうが大いに問題です。立民・維新・国民の党首に私が強調したいのは、「主要政党の党首というのは総理大臣候補であって、野党のまとめ役じゃないんですよ」です。個人的に、泉健太・馬場伸幸・玉木雄一郎の三党首にはインターネット番組のインタビューなどで申し上げてきました。三方とも立派な方ですが、それぞれの党が、そういう体制になるには、かなりの改革が必要でしょう。

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