「利回り」だけを見ると損をする

優待で最も悩ましいのは、手続きよりも銘柄選びでしょう。現在、株主優待を導入している企業は1400社以上あり、上場企業の約4割を占めています。これだけ多くの銘柄からお得な優待をしらみつぶしに探すのは大変ですから、絞り込むための基準を設けるとよいでしょう。私は銘柄選びのポイントとして、「優待利回りが高い」「財務が健全である」といった7つの基準を設けています。すべてを満たす必要はありませんが、チェックが入る項目が多ければ多いほど、投資妙味のある銘柄だと考えています。

中でも重要なのが、優待の使い勝手のよさ。自分がよく利用するサービスや商品、生活圏内で使えるギフト券や割引券は筆頭候補です。利用できる店舗が多い金券・商品券や、どこにでもあるコンビニや全国チェーン店で利用できる割引券も狙い目です。また、企業の業績も見ておきたいところ。業績が悪ければ、値下がりのリスクもありますし、優待の廃止や改悪もありえます。優待で得する以上の損失を被っては本末転倒ですから、最低限、売り上げと純利益を見て右肩上がりの企業を選ぶなど、なるべく業績のよい企業を選びましょう。

これらの条件を前提に、似た銘柄同士を比較する場合には優待と配当の利回りが参考になります。優待利回りとは、株主優待の価値を金額に換算したときの、投資金額に対する割合のこと。投資金額に対して、優待の金額が高ければ高いほどお得だと考えられます。

加えて、配当を出している企業であれば、優待と合わせて配当の権利も得られますから、優待と配当の利回りを合計した総合利回りで比較することをおすすめします。どちらか片方の利回りが高くても、トータルで見ると、それほどお得ではないというケースもあるからです。

総合利回りのいい銘柄は、証券会社のサイトや個人投資家向けの情報サイトで紹介されています。ただし、利回りはあくまで指標の一つ。表面的な利回りのみにとらわれると、いい優待は見つけられません。そもそも、利回りは株価が安くなるほど高くなります。

しかし、株価が安いからといって、優待内容がお得とは限りません。仮に金額の大きい割引や特典であっても、その優待を利用する機会がなければ意味がありません。

たとえば自動車販売店の優待が「購入割引券」だとすると、商品が高額ですから、必然的に割引額も大きくなり、利回りが高くなります。しかし、車を購入する予定がなければ、この利回りは実現できないのです。同様に、投資情報サイトで紹介されている「人気ランキング」も、上位の銘柄がすべてお得とは限りません。あくまで自分にとって使い勝手のいい優待の中から、利回りのいいものを探すという順番が大切です。まずは金券や食料品、旅行やレジャーなど、利用しやすいジャンルから探すのもよいでしょう。