不安定な相場が続いている。新NISAで投資をしている人が注視すべきことは何か。経済アナリストの森永康平さんは「国内の出来事としては、日銀の追加利上げと為替レートの2つに注意を払う必要がある。前者は日本経済にとって確実にマイナスであり、最悪の場合はデフレ経済に舞い戻りかねない」という――。

株価急落3つの原因

8月初旬、日経平均株価が過去最大の下げ幅となり、翌日には過去最大の上げ幅となりました。新NISAで投資を始めた初心者の方々の中には、この乱高下に動揺して保有商品を売ってしまったり、つみたてをやめてしまったりした人もいたようです。

経済アナリストの森永康平さん
撮影=プレジデントオンライン編集部
経済アナリストの森永康平さん

なぜあれほど乱高下したのか、また起きたらどう対応すればいいのか。株価が回復しつつある今、そうしたことが気になっている人も多いでしょう。

まず株価が下落した原因ですが、僕は3つの要素が重なった結果だと見ています。1つ目は日銀による利上げで、これによって為替が円高方向に動きました。2つ目は、利上げの直後にアメリカの雇用統計が発表されたこと。この数字が悪化していたことから、「アメリカもいよいよ景気減速か」という予測が広まりました。

【図表】日経平均株価の推移
編集部作成

3つ目は、イランがイスラエルに報復攻撃をする可能性が高まっていたことです。今回の株価下落はこの3つ、つまり利上げによる円高、アメリカ経済の減速、中東情勢の不安定化が重なって起きたというのが僕の見立てです。

システムトレードの影響で「全員で売りまくる」結果に

ただ、これらが重なっても通常なら株価が歴史的な暴落をするまでには至らないはずですが、今回は一気に4451円も下がりました。一体なぜなのか。これには、アルゴリズムを使って売り時や買い時を機械的に判断する「システムトレード」の影響もあると思います。

システムトレードは、例えば株価が一定以上下がったらシステムが作動して新たに売り注文を出す、といった仕組みになっています。これには弊害もあって、例えば1%下がったから新たな売りシグナルが出ました、その結果2%下がったからさらに新たな売りが出て、加えて他の人たちも売り始めましたというように、皆が一斉に同じ方向に向かいやすくなるのです。

そうすると、今度は「空売りでもうけよう」という人たちも出てきて売り始めるので、またシステムが作動してさらに大勢が売りに向かうことに。これによって相場が下がると、今度は個人投資家が驚いて狼狽売りに走り、結果として全員で売りまくることになるわけです。

しかも、今回は7月中旬までは日本の株式市場が好調だったことから、信用取引で株を買っていた人たちが株価の暴落を受けて追加の証拠金を差し入れる必要に迫られ、信用買い残を整理せざるを得なくなったのも一因でしょう。

こうして売りが売りを呼ぶ形になりました。こんな異様な下げ幅になったのはそのせいだろうと思います。